AkihiroTakeishi

心と体とのAkihiroTakeishiのネタバレレビュー・内容・結末

心と体と(2017年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

新天地。
聞こえはいいが、既にコミュニティが出来上がっている”村”では馴染めなければ文字通り浮いてしまう。その結果、孤独であることで居場所を諦めたマリアと
片腕が機能せず1人で生きていくことで完結し
と同時に誰かと並び生きることを諦めたエンドレ。

そんな2人は夢を見る。
人より無欲ながらの欲望。
二匹の雌雄の鹿は慎ましく、2人の中で豊かに森を愉しむ。

たったこれだけの事へ
人間がたどり着くのはこうももどかしく、
遠く、厄介なのだが、きっといつか辿り着ける

牛用の興奮剤の件は
進めば進むほど、「もう!人間ったら〜」
というシーケンスだ。限られた人間たちが各々エンドレ、マリア、シャーンドルはもちろん、掃除のなんかイケてるおばちゃんにも語られない中に人生を背負っている。
ここではいい奴も悪い奴も可愛げがあり、一方で血の通った尊重されたキャラクターとしてそこに居て心地よい。
エンドレとシャーンドルの握手なんかちょっと泣ける。

そして、関係のピーク。
『パリ13区』でも思った、
男女の関係が縮まる先に謎の一般論でセックスが深い仲の確認として差し込まれそうになることがある。
ことをしたから、触れたから確定をとりに行くというのがコミュニケーションの先に相手から拒絶されない≒好意が双方向である。
と確認したいのだ。そんなのなんの保証にもならないのに…

マリアの自殺シーケンス、本当に怖かった
屠殺場で日々当たり前のように見てきた、
命を絶つための凶器の効果、流れてゆく血潮。
マジもう無理。。。的なリスカではなく、
世間一般における、振られた人の感情の発露、つまり涙を流すということが起きない。
それでも、彼女は彼女なりに生き物の身体を理解するのに用いた屠殺場でみた牛たちを思い出し、体に切り傷を作り血を流す。
(涙って、ヘモグロビンを血から抜いた成分と一緒らしいですね)

それらがわかっていても、じわじわと悲しみと不安と恐怖がマリアに迫る。
「たのむ、ここで終わらないでくれ…」
と思うとなんとも間抜けにラジカセが止まる。

ここの時制どないなってんねんはさておき
諸々終わって翌朝、あまりにもポップにトマトをナイフで切って飛び散る汁にはしゃぐ2人…
ここで不安からの解放。やっぱ安心は朝にくるよね。

あれ、でも、なんでマリア最後嘘ついた?
AkihiroTakeishi

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