あさのひかり

ムンバイの王のあさのひかりのレビュー・感想・評価

ムンバイの王(2012年製作の映画)
3.2
終わりなき日常を生きろ、ムンバイのスラム少年版、と言ったところなのかな?

新しい高層マンションの並んだ地域と、必要な修理すらされていない小さな古い家が並ぶ地域がとなりあってる街の風景とか、スラム街のゴミの山の風景とかはなかなかショックではあった。それだけでも確かに伝わってくるものはある。

そして、この系統の映画は決して嫌いではないのだけれど、これに関しては、なんか物足りなかった。

スラムの少年が主人公で、あくまでフィクションでありながら、ドキュメンタリーのように彼の生活に密着して撮影している。ストーリーは、それなりにいろいろあるけれど、基本的には単調で、それ自体が惹き付けられるものではない。

また、フィクションであるなら、ストーリーに作り手の何らかのメッセージなり思想なりが込められているか、というと?で、実情を伝え、問題提起をしているのかな、というくらいしか伝わってこなかった。

ストーリーに乗って感想をいうと、「ダメ親父本当ダメだし、主役の息子の怒りはもっとも。でもこの環境の悪い中何とかたくましく生きてるこの息子も、将来このダメ親父みたいになるかもだし。で、結局、誰が何をどうすべき、って言いたいんだろう?」って思ってしまった。

それなら最初からフィクションではなく、彼らの本当の生活にそのまま密着して、家族なり生活なり実情なり本音聞いたほうがより興味深いものができるんじゃないのか、と思ってしまったり。うーん。


追記

この映画そのものの評価としては、あまり変わらないのですけど・・・。
「ガリー・ボーイ」で描かれてたムンバイのスラムの雰囲気、「あなたの名前を呼べたなら」で出てきたガネーシャのお祭り、そしてどちらでも感じられる、富める者とそうでない者の格差・・・。
この2つの映画の理解を深めるうえで、この映画を観たことが結果的にとてもいい経験になりました。そういう補完の意味では、この映画もなかなかおすすめだったりはします。
あさのひかり

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