Ryan

ハートストーンのRyanのレビュー・感想・評価

ハートストーン(2016年製作の映画)
4.1
無知で無垢なイニシェリン島ver
各国の映画祭で絶賛され、受賞を重ね続けた作品


ストーリー
アイスランドの小さな漁村に住む2人のプレティーンの少年と、思春期の感情的および性的な混乱との強い友情の物語


主演 バルドゥールエイナルソン
監督 グズムンドゥル・アルナル・グズムン     ドソン


すごく繊細な映画。
美しい自然と閉鎖的な漁村で自我を意識し始めるが子供だからどうすることもできない絶望感。初めての体験や高揚感、全てが繊細に描かれている。
作風がこの村にあっており、暗くは無いがどこか異国情緒、我々の知らない村の様子にマッチしている。よく2時間9分でまとめた。
人によっては体感長く感じてしまうかもしれないが、ハマる人にはハマる。

ストーリーが秀逸で無駄がない。
流動的でありながら子供らしいパワーを残し、遊び心もありながら大人の持つ感覚にも近づける。何を考え何をしたいかをセリフで言わすのではなく、行動と自然で演技させている。シーンシーンがどれも美しく、思わず見惚れてしまう力強さがある。

まず、何歳の時に撮影しているのかわからないが、本当に思春期真っ只中の少年たちをうまく使っており一種のドキュメンタリーを観ている気分になる。この映画が持つ力はその主役となる2人の少年の演技力。
バルドゥールは声変わりも体つきもまだ子供なのにブレアは成長が早いのか、声変わりし体つきも男になっている。
そして、2人とも美しい。それは意識して撮影されており脚本のディテールにあっている。全く違うキャラクター達だからこそこの映画の持つ意味がわかる。

性のマイノリティという繊細に扱われる題材を、自然に交えて浄化していく様、淡い感情のぶつかり方が、絵々にハードになっていく展開は苦手な方もいるだろう。追い詰められた少年の葛藤や、決断はとても共感して寄り添えるものではない。理解できるとは言い難いからだ。しかし、親に匿われた年頃の焦燥感を目の当たりにするには実に贅沢な時間であった

もがいても逃れようの無い虚無感、ラストはそれで良いと思わず思えた。
壮大な自然が織りなす、人間劇であり子供から大人への成長の一歩が見れた、そんな大切な映画だったと思う。
Ryan

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