えいがうるふ

コロンバスのえいがうるふのレビュー・感想・評価

コロンバス(2017年製作の映画)
4.0
スクリーンで観られてよかった。
建物の外観はもちろん、屋内までもひとつひとつ丁寧に作り込まれた構図がとにかく美しく眺めているだけで眼福。逆にいうとそこで展開される人間たちのドラマはあくまでもそれら物言わぬ背景の豊かな佇まいを引き立てるために配置された小道具のようにさえ思えた。

それほど控えめに立ち回る人間たち。ヒロインにとっては人生の岐路を描いた話でもありそれなりにヘビーな展開になってもおかしくないのだが、終始淡々としていて、熱くならない。
こりゃ途中で寝落ちするかなと思いきや、意外にも全く眠くはならなかった。個人的には女性キャストに比べて男性陣のキャラクターにあまり魅力を感じられなかったのが残念だったが、ヒロインの好感度は高く、その押し付けがましさのまるでない存在感のおかげでドラマから一歩退いて作品全体を絵画のように楽しめた。

「建築は人を癒やす」という意味のセリフが出てきたが、映像とあいまってその言葉に説得力を持たせる物語としてきっちり仕上がっていた印象。ただしそのシークエンスは決して分かりやすくはなく、万人むけとは言い難い。
誰にでも「面白いよ!」と推せる作品ではないが、建築にしろ小津映画にしろ、一部のマニアにはたまらない魅力がつまった稀有な佳作には違いないので、確実に刺さりそうな趣味人にピンポイントで教えてあげたい、そんな作品。