レインウォッチャー

KUSOのレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

KUSO(2017年製作の映画)
2.5
■RWと48の地獄㉝
奪われた体の一部を取り戻すため、RWは大晦日までに48の魔物を倒さねばならない!奴等は地獄映画の中に潜んでいる…

□戦績
《糞》なのか《空想》なのか。一応前者ということっぽいが、後者でも成立しSo。少なくとも《空疎》ではない様So。

BrainfeederのボスことFlying Lotus、本業ミュージシャン/プロデューサーの彼が、別のSteve名義で作った初の映画作品だ。

「史上最もグロテスクな映画」なんて雑なコピーがついてたりもするみたいだけれど、まあそうでもない、と思う。
確かに、基本的には汚物・虫・排泄・疱瘡…とかがメインの、嫌悪感ポルノ的なクリップの意味が繋がらない連続ではある。でも、なんとなく「流れてく」ような感覚があって、それは慣れもあるだろうし(人間は適応する)、何よりドリーミーだからだ。それも、没入するというよりはあくまで伝聞の。

デヴィッド・リンチ、クローネンバーグ、あるいは駕籠真太郎とか、そういった夢のスムージー。GHOSTとSHELL、なんてラインも見つけることができる。
この感覚は、彼の音楽と多少通じるところがある。彼のアルバムは短いピースの集合みたいでもあるし、ライヴもDJセットに近い。歴代のMVでは、今作にあったようなキモカワ(8:2)コラージュアニメが確認できたりする。

ただ、今作を観ると、今まであまり表層化していなかった「彼が何に取り憑かれているか」がダイレクトにわかるようでもある。やたらとまとわりつくアナル周りや醜形恐怖のイメージ。自己分析のためにいくつも名義(仮面)を使い分けるのは創作者に珍しいことではなく、これは彼なりのデトックスまたはキチゲ解放だったのかもしれない。

これを長編映画作品としてどうかといわれると正直なんとも言えないけれど、もし大穴で《九相》なのだとしたら、彼はきっとこれからも変わりゆく。また映画を作るのか、音楽なのか、何にせよ肥やしになれば良いと思う。って、やっぱり《糞》じゃあないか。


□倒しかた
たまに流れる音楽に、「やっぱりかっこええんかーい」てなる。ドラムのドライな質感、ベースのうにょり具合、メロウスペーシーなシンセ類、一発で彼の世界。

今作にはFlyLoだけでなくAphex TwinやThundercatの音も入っていて、一時でもWarp界隈で過ごした人間は瞬間強制的にチルしてしまうのだ。
あと、ファンクレジェンド、ジョージ・クリントン大先生もまさかの出演。愛されてんなあ。


□分類
人の夢の話をずっと聞くみたいな地獄


□取り戻したパーツ
Flamagra


□次回予告
煮孤刑!プリ●●●ズ・オブ・ゴ●●●ランド!
>>To Be Continued...