シンタロー

ブーベの恋人のシンタローのレビュー・感想・評価

ブーベの恋人(1963年製作の映画)
3.7
クラウディア・カルディナーレ&ジョージ・チャキリス主演。
1944年、終戦後の爪痕が残るイタリア・トスカーナの田舎街に住むマーラの家に、ブーベという青年が訪れる。共にパルチザンとして戦ったマーラの兄の最期を伝えるためだった。反ファシズムのマーラの父は息子のように歓待し、政治には無関心のマーラも、パラシュートの白い絹布をプレゼントされ、ブーベに好意を抱く。数ヶ月の文通に期待した言葉はなくヤキモキするマーラ。相談もなく勝手に父親と婚約話を進めていたことにも腹を立てていた。そんな時、ブーベは同胞と共にファシスト派と揉め、殺人を犯してしまう。追われる身となったブーベの帰省にマーラはついて行くのだが…。
母親がVHSでコレクションしていた作品。学生だった当時は音楽以外ちっとも良さがわからなかったのですが、先日BDの美しい映像で再見の機会が…これが悪くない。カルロ・ルスティケリによるノスタルジックなスコアはやはり素晴らしい。単なるラブストーリーとして記憶していたけど、これが大間違い。戦後イタリアの混沌とした街並み、民衆がしっかり描かれているし、後半の裁判シーンもなかなか力強い。そして、マーラという一人の女性の成長の物語として見応えがある。蓮っ葉で、すぐにいじける子供っぽかったマーラが、ブーベと引き裂かれ、迷い葛藤しながら、見守り支える女性に変わっていく過程が見事。特に映画館前である決意を語るカルディナーレの芝居が素晴らしく、泣けました。主演の2人が大変美しいので、印象的なカメラワーク、カットも多々あり、目の保養になります。
主演はクラウディア・カルディナーレ。この時代はヨーロッパから名女優がたくさん生まれましたが、美貌、色気、演技力、存在感…最もバランスのとれた人だと思います。ロミー・シュナイダーと共にヴィスコンティのお気に入りとしても印象的。本作は前半から後半、モノローグ&エピローグと様々なヘアスタイル、メイク、ファッションが楽しめますし、年齢ごとの演じ分けも見事です。相手役にジョージ・チャキリス。どういう意図でキャスティングされたのか…踊らないチャキリスに驚いた人は多かったはず。顔とスタイルの良さは言うまでもなくですが、芝居は…。ただ、当時外国語が稚拙だと吹き替えにされる俳優が多かった中、ちゃんとイタリア語を話しているのは立派。海外より日本で大変人気があったのも特徴的でした。
シンタロー

シンタロー