随分昔にロケの現場を見かけたことがあります。
そのロケの場所は名古屋駅をすぐ出て高層ビルが立ち並び多くの人が行き交う都会の中心。その人混みの中で、喪服を着た俳優さんが一人遺骨と遺影を持って肩を落とし歩いていたのです。
「そんな現実あるか!」
明らかに異様な光景です。
ちょっとその脚本見せてみい!
どういった経緯でそんな状況なっとんねん⁈
どこの世界にお骨を持ったまま人混みを歩きます?しかも一人でですよ。なぜ?が多すぎてもはや全てが滑稽に思えてしまいました…
たくさん映画を観ていると、たまにそんな演出に遭遇してしまいます。コメディやSFならともかく、シリアスな作品に於いて堂々と現実から掛け離れた演出をやってのける、そういった雑な感覚が僕には分かりません。そういった細かな嘘っぽさで、物語に入り込む気力が薄れてしまうのです。
僕はこの作品もその一つだと感じてしまいました。
まず冒頭から喪服を着た親戚一族が遺影やお骨を持って、道いっぱいに広がってそろそろと歩いています。
部落か!昭和初期か!なに公道塞いどんねん!
もうファーストシーンから萎えてしまいました。その第一印象が変わることなく物語は終わってしまいました。
あらすじは、冒頭で遺影を持って歩いていた大輔が、おばあちゃんの肩身である夏目漱石の「それから」の古本をビブリア古書堂に売りに行きます。
そこの店主である栞子がその本を手にした途端雄弁に語り出します。本が書かれた経緯や作者の創作意図、その時の時代背景を見て来たかのように喋り出します。そしてその古書の匂いや汚れ具合や陽の焼け方から考察し、いままで辿った本の経緯まで言い当てます。本から物語を導くのです。
その古書から溢れでるおばあちゃんの物語。その物語が現代の事件と重なって行きます…
このように物語は面白いはずなんです。脚本が悪いのか、演出が悪いのか分かりませんが、いささか強引で辻褄が合わない話の展開は観ていて高揚感が湧きませんでした。
食材は良いはずなのに、シェフが美味しく調理が出来なかったといった感じです。とても残念…