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逃げ去る恋のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

逃げ去る恋(1978年製作の映画)
4.2
ドワネルシリーズ最終回、前4作の伏線がこんな形で回収されるとは!ストーリーの巧さは、さすがトリュフォーです。4作目から、トリュフォーが本作まで8年の時を空けたように、アントワーヌのダメっぷりが情けなくて、シリーズ半年ぶりの鑑賞。お笑い要素がこんなに入っているのにラストにうるうるしました。

寂しさを言葉にできなかったアントワーヌ少年が、そのまま大きくなって、探し求めているのが母の愛だと周りの女性たちの方が気づいていく。初恋の女性、妻、今の彼女が、口々に、アントワーヌは女性に、母、妻、恋人、妹、娘の全てを求めていると。

「大人は判ってくれない」のアントワーヌの表情に胸が痛み、あの作品のシリーズがまさかコメディ的展開になるとは予想できませんでした。たびたび女性たちから子供の頃の痛みを引き摺って悲劇の主人公を気取るな向き合え人のせいにするな、と言われる場面に、トリュフォー監督の葛藤が明らかにされます。結果、コミカルにしたんですね。

回想が度々はさまれ、アントワーヌの20年の人生と、その都度、向こう見ずに突撃まっしぐら(しつこいとも言う(笑))な女性遍歴が描かれ、愛の巡礼はそろそろ目的地に着くのでしょうか。

同じ役者、ジャン=ピエール・レオが20年、成長していくアントワーヌを演じる意義は大きかったと思います。トリュフォーの分身で自伝的作品だと言われていますが、レオの空気をつかむような個性がアントワーヌの無垢な面を引き立てていました。

アントワーヌのレオに会えないのは寂しいけど、おとぼけのレオのファンになりました。また他の作品でお会いしましょう。

アントワーヌ・ドワネルシリーズ5作を順番に観て(一部前後しましたが)、その中で本作がいちばんホッとし、好きになりました。伏線回収ばんざい。トリュフォー監督のストーリーテリングの力が熟してきたのだとも思います。登場人物すべてに愛情が注がれていました。

DVDには楽しみにしていた特典映像がついていなくて、トリュフォー監督のお話を観られなかったのが唯一残念。
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