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正しい人間のkiritoのレビュー・感想・評価

正しい人間(2016年製作の映画)
3.9
【イノセント】

暴行の被害にあった主人公が、無実の人間に罪を着せ、そのことに悩み葛藤する物語。
感情移入は全く出来ないし、中盤まではうーんという感じだったんだけど、そこからの追い上げが素晴らしかったのでこの評価。

まず、主人公に結構苛立つ場面が多い。というのも彼はいわゆるDV的な性質があり、乱暴な言葉遣い(渋滞も耐えられない)自分を制御できないアル中という厄介なタイプ。そのくせ自分はできる人間だと思っているから奥さんのおかげで手に入れた販売員ではなくフォークリフト作業にも納得がいかずに上司に悪態をつくタイプ。
これだけでかなり嫌いな人種。

ところが、この映画は彼の目線の映し出し方が上手い。ぼやけたミラー、ガラスを効果的に使い彼の心情をうまく表してる他、「鏡の破損」を通じて彼の心が壊れいく様を演出している。
さらに、うまくいかない(自分のせいなんだけど)家族とは対照的に対面にあるマンションで暮らす人々の家はどこも楽しそうに描き、ますます彼の焦燥感を募らせるという演出も見事。

彼自身ももちろん自分を変えないといけないことはわかっていて、その都度反省するのだが、制御できない(これぞまさに、DVの典型な気もするが)。

後半からの怒涛の詰め込み方もすごい。最終的にまあそうなるよなというエンドなのだが、彼に人間臭い部分も多く嫌いになれなかった。

映画全体としての演出がうまい。評価が伸びてないのは多分主人公の人間性なんだと思うけど、良い一本だった。

2020.5.16
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