うっちー

あの日、兄貴が灯した光のうっちーのレビュー・感想・評価

あの日、兄貴が灯した光(2016年製作の映画)
3.3
 前から気になっていた作品。『EXIT』が良かったので、チョ・ジョンソクも気になって、とにかく観てみた。
 前科者で要領のよいドゥシク(ジョンソク)と事故によって失明し、ひとり失意の日々を送っていた元柔道のスター選手、ドゥヨンの異母兄弟の、束の間の再会と再生を描くドラマ。ちょっと今年初めに観たイ・ビョンホンとパク・ジョンミンの『それだけが、僕の世界』に似たつくり。というか、外枠だけだけど。
 前半は半端者、ドゥシクの手際の良さやズルさ、そして久々のシャバでの些細な失敗などをコメディー調の軽妙さで描いていく。保護観察で実家に戻ったドゥシクは、実家で家に引きこもるドゥヨンに会う。兄弟とはいえ、異母兄弟で仲は良くない。特にドゥヨンは頑なで、食事も取らず、兄に反発。それまで一体どう暮らしていたのか不思議なくらい。
 ここで不自然なのが、この家庭に一体なにがあったのか、というのがあまり詳しく述べられないところ。父母はいつ亡くなったのか、兄がグレたのは継母のせいだというがどうなのか、ドゥヨンの面倒をみる人はなぜ誰もいなかったのか。いろいろ突っ込みどころがありながら、中盤以降は一気に話が進む。強引なくらい。
 柔道一本でおしゃれも恋も知らないドゥヨンを外に連れ出し、マイフェア・レディばりに垢擦り、洋服選び、ヘアカットまでしてあげる兄。ここでのドゥシクの手荒な優しさ描写は楽しく、微笑ましい。また、今作でのジョンソクさんは全体的にパリッとしていて、こんなに男前だったっっけ?というくらい。世間擦れしてるけど、いろんなことが器用にでき、ひとりで生きてきたんだろうな、と思わせる寂しさみたいなものが滲み出る存在感。なかなか魅力的だ。 
 ドゥヨンも次第に打ち解けはじめ、兄とコーチに説得され、柔道でパラリンピックを目指すことに。この辺からあれよあれやというスピード。また、韓国ドラマらしい難病ものに。確か若くてもなるものはなる。だけど、ラストにかけては、いろいろ急過ぎるwwww 正直、そんなぁって思いました💦

 ドゥヨンのために家の中をバリアフリー化してしまうドゥシク。素晴らしい! 
詐欺かつ嘘つきでなければ、旦那さんにしたいくらいの器用さと豆さ。私はなんだかこの役柄のそんなところばかり気になった。

 ギョンス君は確かに演技は巧みだけど、自然過ぎてさらっと見流しちゃいそうになる。最後の「ヒョン」連呼とかは熱演だったけど。しかし、どちらかというと、ドゥヨンの気持ちがあまりわかりにくいつくりの映画では? これは粗い脚本のせいでしょう。
 せっかくの硬いテーマ、良い俳優も揃ってるのになんだか盛り上がりなく、あっという間に尻つぼみで、心にあまり残らない作品。『それだけが、〜』のが数倍泣かされましたし、すきです。
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