グラビティボルト

許された子どもたちのグラビティボルトのレビュー・感想・評価

許された子どもたち(2019年製作の映画)
4.0
巧い時の内藤瑛亮映画は、瞬間最大風速が何度も出る。
疾走シーン、ボウガン周りの魅せ方、
実は強い女子小学生、突然走り出す母親、どれも身体的な要素が強いショットで勝負してる。

重苦しい題材なのに、魅せ方の手数が多い。やはり嫌いになれない映画作家だ。
少なくとも「ミスミソウ」の100倍は面白かった。
ミスミソウに続いてボウガンが凶器の映画なんだけど、撮り方が全く違う。
引金のアップと顔を切断する事で虐められっ子を何故射殺したのか動機を顔から読み取れなくする画面構成が見事。
題材に対して攻撃的な印象で、家庭裁判所の狭さを活かした構図も素晴らしかった。
無罪放免で閉廷する時に加害者家族が頭を下げると座り込む被害者家族が見える正面ショット。ここに裁判の無情さが映っている。

終盤、少年が罪に向き合おうとする場面に恋人が着いてくる、エモーショナルに疾走する等、「ジュヴナイルにありがち」な演出が山ほど出てくるんだけど、「エモい場面は事態を解決しない」ズラしが見事。
特に遠くにいる母子の顔が擬似的に切り返されてからの疾走シーンは凄い。

尾野真千子をマッチョにしたような黒岩よし演じる母親が階段で打ちひしがれていて、河原で上村侑演じるキラが感情のまま「悪魔のいけにえ」ダンスをする場面、直前の二人の正面の目線ショットを繋いで何かが通じたような疑似切り返しを作る。

やおら走り出した黒岩よしを追いかけるショットのパワーも凄い。
全体的にこれまでの内藤瑛亮映画の中で一番画面がパワフルだと感じた。
ここでドラマチックに抱き合う母子のショットを観客に期待させて、斜め上に裏切るシナリオも見事。
やはりこの作家は自分で脚本書くべき。