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犬ヶ島のmitakosamaのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
3.8
近未来デストピア日本をウェスアンダーソンによってストップモーションアニメ化された作品。もうなんというか中毒性のある絵作りの映画だね。

欧米人による映画で日本の描写が“どこかヘン”というのはお決まりだが、今作では明らかに、この変な日本描写を意図的に演出している。
この変な日本のビジュアルが絶妙に良い。しかも地震や津波等で一度荒廃したという設定なんだよね。偽オリエンタル・デストピアとでも定義したら良いのかしら。

ストップモーションアニメといってもクボやコララインのスタジオライカの様な超絶作り込みではない。むしろ動きはかなり固いと思う。でもこれまた味があるんだよなー。作風のポップアート感と実にマッチしている。

犬の伝染病の対策で隔離政策を行ったメガ崎市の小林市長。ゴミ埋め立て地に投棄される犬たち。市長の息子アタリが自分の犬を探しにやってくる、という話。

小津安二郎の構図という指摘はとても納得出来る。会話の度にキャラクターがカメラの方を向いて喋るとか如何にも小津っぽい。
しかもサントラに七人の侍を使って黒沢リスペクトも堪能出来る。

言語も日本語と英語が混在していて、テロップ等も両方流れる。この文字の入れ方も実にセンスがいい。優秀なタイポグラフィックも見所。

全体のストーリーも良いのだが、イチイチ変な日本描写が可笑しいのがたまらなく面白い。市長や息子が演説すると締めに俳句を一句詠むんだよな。そしたら観衆がみんな泣く(笑)

センスオブワンダーの塊。逆に日本人の感覚では絶対作れない日本を描写した映画だね。
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