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散歩する侵略者のefnのレビュー・感想・評価

散歩する侵略者(2017年製作の映画)
3.1
 車が行き交う道路のど真ん中を歩く(ルイマルの引用?)とか警官をワンテイクでバンバン撃ってる間はいいけど、会話をはじめると知能がグッと下がる。
 概念の収奪とか大仰な設定なのに、やってることは台詞で出した単語の「対」になる反応をとっているだけ。愛の逆は無関心、ではないけど概念の関係性と対偶は別だから人が仕事の意味を見失ったからといって知能は後退しないし、暴力の在り方を忘れたからといって衝動はなくならない。仕事という言葉を失っても対人関係に関わる概念は残るだろうし、刺激に対する反応は本能なのだから消しようがないだろう。
 概念がなくなれば行動に移せなくなる、という発想は戦車がなくなれば戦争はなくなる、という戯言と一緒で不愉快な出来事から逆算してああなればいい、こうなればいい、と妄想を垂れ流すための理屈でしかない。
 そもそも夫婦という小範囲の出来事や愛みたいな曖昧な言葉を侵略を同列に置いている時点で程度が知れてる。(そもそも侵略者同士は共感でつながっているのだから人並みの愛を知っているのでは?)
 とにかく演出が勝ってしまっている。雲の巻き戻しや最後のアポカリプスもよかった。意味深な言葉に合わせて暗転したり車前の会話が立ち位置の変更で逆光になる台詞演出もよまった。でも肝心の知能の欠いた脚本で台無し。
 黒沢にはもうちょっと企画を選ぶ余裕を持ってほしい。
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