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4.0
“西洋の権力構造”に蝕まれたアメリカ国民の貧しい精神に政治的でも宗教的でもなく至極シンプルで真っ当な意見を述べるジェームズ・ボルドウィンの言葉や劇中差し込まれる当時の映像に、あらためて人種差別という事実を突きつけられ言葉を失いそうです。

ではこの”権力構造”の根源とは何か。なぜ白人は黒人を差別するのか。そこには間違いなく肌の色だけで”区別”する意識だけではなく、キリスト教(正しくはプロテスタントの一派が説く予定説)が決定的な裏付けとなっています。

アメリカは、西欧で迫害されていたまじめなプロテスタント達が、「神の国」を作ろうとして移住して作った国。彼らは、”神様が人間を作るとき、性格や能力・環境などその人間に関するあらゆることを「予め」「定めて」いる”と説く「予定説」を信じる人々。

つまり、アメリカでの人種差別は”白人(WASP)”にしてみれば信仰に基づいているものであり、それは生活の一部であり、だからこそ根深いし、人種差別はしてはいけないのである、と訴えかけたところで簡単に払拭できるものでもない。キリスト教の神は罪深い。

ではなぜ黒人なのか、それは当時の貿易構造や地理的要因から、アメリカ開拓の際に不足していた労働力をアフリカ大陸から輸入していたから。仮に日本がもっとアメリカに近かったとしたら、きっと我々がYELLOW MONKEYと呼ばれ、差別されていたんです。黒人差別なんてただそれだけのものなんです。

余談ですが、カトリックの欧米諸国では19世紀半ばにはモラル的な観点から奴隷制は廃止されたものの、プロテスタント勢力の強いアメリカ、南アフリカでは近年まで人種差別の勢いが止まることはなかったのも、これが理由です。
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