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人類遺産のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

人類遺産(2016年製作の映画)
3.8
世界中の廃墟のドキュメンタリー。ナレーションも劇伴も無く長回しの映像が続く。えっ、と思って読んだ駅名は「なみえ」…まさか冒頭ソ連の次に日本が出てくるとは思わなかった。そうだった。日本には、あったのだ。胸が痛くなった。

そこにかつてあった人間の営みを想像する。
廃墟にノスタルジーを感じると思っていたのに、好奇心で観始めたことを後悔した。
たとえば、廃工場、そこで働き、恋したり、1日の大半を過ごした職場が瓦礫になっていたら。
自分の家が廃墟になった姿を想像したら、等と考えはじめた。

思いの外、日本のが多い。半分近く日本だった。繁栄と廃墟、その間にあるのは、人間の豊かな営みか。
否。

廃墟になった個別の理由はわからないが、戦争、山火事、ハリケーン、洪水、砂漠、人間の引き起こした人災が天災より多くあった。地球温暖化に因る天災は人災だろう。天災を防げなく拡大したのも人災だろう。

原題は「ホモサピエンス」。繁栄も廃墟も人の為したこと。

戦争の残骸、戦車が草に覆われている。人類がいなくなれば、植物は繁茂し、兵器は錆び分解され、自然に飲み込まれていく。どの廃墟にも鳥たちが棲みつき、喜びの声をあげていた。

曇りか雨、強風の日の寂れた映像で気が滅入った。
  
若い頃、文学者の栗田勇さんの
『われらは美しき廃墟をもちうるだろうか』
という文明批評と建築論を読んで、高層ビルが廃墟になった光景をローマのコロッセオと比べて想像したことがある。壮大な想像をしてから、身近な庭には永年に残る素材、プラスチック類等は極力使わないようにした。

<上手く朽ちる>ことがプラマイゼロの<上手く生きる>ことのように感じている。

繁栄とは何か。
文明とは何か。
人類とは何か。

時には壮大に俯瞰してみるのもいい。
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