あーさん

タリーと私の秘密の時間のあーさんのネタバレレビュー・内容・結末

タリーと私の秘密の時間(2018年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

何人かのフォロワーさんが観ていらっしゃって気になっていた作品。

長尺の上、自分語り多めです。。


これは、、
色々な記憶が呼び覚まされたなぁ。

子育ての大変さは千差万別だ。だけれど、
良い母親であるべき、と言われ(ていると感じ)る?風潮の中、"子育てが辛い" とあまり大きな声で言えないというのは、世界共通なんだな…と思った。

子育ての愚痴を言うと独身の妹によく言われたのが、"だって、ほしいと思って産んだんでしょ?"
そうだよ、その通り!それを言われるとぐうの音も出なくなるんだけど、
でもね、こんなに大変だと思わなかった…ってやっぱり言いたくもなる。
それを共有できるのはママ友なんだけれど、ママ友だって子育てで忙しい。
じゃあ、誰がこの気持ちをシェアしてくれるの⁉︎
夫は夫で仕事が一番忙しい時期に子育ても重なるから、全く余裕がない。
お互いにクタクタになって、夜はバタンキュー。背中合わせの日々が続く。。
どんなに仲が良かった夫婦も、出産という変化に関係が変わってしまうこともよくあることなんじゃないかな。

そんなことを思い出しながら、主人公マーロ(シャーリーズ・セロン)が自由奔放で年若い子守のタリー(マッケンジー・デイビス)と出会うことで前向きに変わっていく物語なのかな、と思っていたら、、

うわー、これは思っていたより深刻だった💦

頑張り過ぎてしまうお母さん!!
それは、自分が幼い頃にちゃんと母親らしいことをしてもらえなかったということから、自分はそうしたくない❗️という思いが強くて、頑張ってしまうパターン。

それに加えて、何かしらの障がいがあるとか手がかかる子を育てているお母さんは、特に人に頼ることが難しいんだろうなと思う。
マーロは、長男のジョナのことで学校に呼び出され、敏感過ぎて扱いが大変だから専属のヘルパーがつけられないならここでは預かれない、と言われてしまう。。

彼女は何かと気にかけてくれる兄ファミリーとは付き合いがあるものの、継母が3人という家庭環境に育った為、頼れるアドバイザー&ヘルパーがいないのだ。

前半のパート、3人目出産前後のマーロの切羽詰まった行動を見る度に胸が締め付けられる。。

誰か、助けて❗️

夫にさえ、SOSを出せないマーロ。
それは夫だけが悪いというよりも、仕事も家事も完璧にこなしてきたから、それまでのようにちゃんとした母親、奥さんでいたくて彼女自身が言えなかったからも大きい。
心も体も限界なのに、イライラしてブチ切れてる所を見せたくなかったんだ。。

切ない、、

シャーリーズ・セロンとの出会いは、5年前の"MAD MAX 怒りのデスロード"。
あの作品で、私は彼女にノックアウトされた。
カッコいいフュリオサの虜になった。
そのフュリオサが、、

出産を経験したら、母親はクマになる。
体型が、大袈裟でなくクマになる。
シャーリーズ・セロンの約50ポンド(約23㎏?)増量したという渾身の役作りには驚いたが、物凄く貫禄のある体型は子どもに栄養を与える為に必要なこと。体の仕組みがそうさせるのだ。

そんな風にどんどん母親然となっていく妻に対して、夫は外の仕事が終われば家では寛ぐだけ。ちょっとしたお手伝いくらいはするけれど、後はゾンビを殺すゲームをやって寝るだけ。。⁉︎
また冷凍ピザなのか、、なんてあからさまにガッカリしないでよ!

何も言えないマーロ。

ああ、すれ違い。。

"話を聞いてくれるだけでいいの。"

そうなんだよ!
毎日、困ったちゃんの話なんて聞きたくないかもしれないけれど、母親は日々それと格闘しているのだ。誰かにわかってもらいたいのだ。

夫婦に二人で子どもを育てる、という発想があれば、ここまで苦しむことはなかった。

あんなことになって、ようやく気づけた夫婦の未来は、ここからは少しずつ明るくなっていくだろう。
本来の自分を取り戻したマーロの将来も、きっと開けていくと思う。

夫婦の軋轢や喧嘩中心ではなく、タリーという子守を介在させて、お互いにどうすべきだったのかを考えさせる寓話的ストーリーが、テーマのわりにリアルになり過ぎず良かった。

タリー役のマッケンジー・デイビス、夫役のマーク・デュプラスの演技もナチュラルで◎
音楽も懐かしい♪♪

最後の最後で、"はじまりのうた"みたいにイアホンを共有しながらお料理をする二人の姿にホッと胸を撫で下ろした。。


**

母親が何故追い詰められるのか?
想像もつかないかもしれない。
でも、自分の周りのお母さんが余裕をなくしていたら、大変ですね、とか頑張ってるね、という言葉でもいいし、階段でベビーカーを持ってあげることでもいいし、母親が自分だけ孤軍奮闘していて世の中から忘れられているという気持ちにさせない、というだけでも、どんなに違うかと思う。
そんなさり気ない優しさがもっと世の中に浸透したら、もう少し少子化にも歯止めがかかるのではないかな、と思うのだけれど。

かくいう私も、沢山の人に助けてもらってきた。転勤族で実家は遥か遠く、3つ違いで男の子2人を育てていたから、上の子が幼稚園に入園した頃は、早生まれの下の子がまだ首も座るか座らないかの状態での送り迎え、、車もないし、自転車で15分の距離…どうしよう?できるかな?
そんな時、ご近所ママさんや生協で同じ班の子育てを終えたベテランママさん達が、シフトを組んで下の子を預かってくれた。本当に有り難かった。。感謝!
毎日、外遊びさせるだけでグッタリしていたら、前のお家の方が時々家で焼いた焼きたてパンを持って来てくださったこともあった。子ども達は大喜び♪
嬉しくて泣きそうになった。。
自転車の前に1歳の下の子、後ろに幼稚園児の上の子を乗せていて、信号待ちでそのままコケてしまった時も、駆け寄って助けてくれたおじさんがいた。
"お母さん、危ないよー大丈夫か?"助け起こしてくれて、優しい言葉をかけてくれた。
本屋さんであばれはっちゃく兄弟を連れていたら、"お母さん、良い子達で幸せですね。これからどんどん楽になりますよ。"と言って下さったおばさんもいた。
後で、"なんか、褒められたね!"と子ども達とスキップしたくなった(本当は見かねてわざと声をかけてくれたんでしょうね!)🎶

私は、応援されている、エールをもらっている、、それだけでどんなに救われたか。
今でも、その一つ一つは私の宝物になっている。
そうは言っても、子育て中には持ちきれない大変な事も多々あったけれど、その度に誰かしらの力を貸してもらって、どうにかこうにか乗り切ってきた。

だから、もっと外に開いて、助けを求めて良いんだよってお母さん達に言いたい!
そして、自分が助けてもらった分、今度は下の世代の方に何かしらの恩返しはしていきたいと思っている。


お母さん達が、傷だらけのマーロみたいになってしまう前に。。


コロナで人との接触が制限されてしまった今、なかなか外へ出て行けないのが辛いけど、何とか知恵を絞って耐えてほしいなと思う。

→家の中で親子でできること、コメント欄の少し下の方に書きました。。
あーさん

あーさん