航空基地に務める通信担当の女性三人が基地のピンチに体を張って助けるというストーリーは演出のテンポのよさや円谷英二による飛行機の特撮の迫力もあって見ごたえがあったし、女性は銃後を守るというイメージが強い太平洋戦争の時局に大スターである原節子や高峰秀子が積極的に戦線で活躍するドラマの珍しさもあって飽きることなく鑑賞することができた。
1945年という本土決戦間近まで追い詰められて積極的な軍事内容の映画を作りづらくなった状況のなかでこういう女性メインのドラマが作られたというのが興味深い、登場人物たちも勇ましさや意気軒昂というよりここまできたらやるしかないという悲壮な覚悟が滲んでおりそうしたなかでは男女ともにアメリカ軍を迎え撃つしかないと当時の日本ではそう叫ぶしかなかったのだろうか。それとも本作での原節子や高峰秀子といった大スターが身体を張って男性を助けるという展開に女神が追い詰められた私たちを助けてくれるという幻想を抱かせ一時でも慰めようとしていたのかも。
戦争末期で食料が不足していたせいか出てくる俳優たちはみなげっそりしていて痩せこけている、なかでも佐分利信はあまりにもやつれていて坊主頭ということもあって一瞬誰かわからない。
あれだけ敵に追い詰められてピンチの展開だったのにラストは楽天的なオチになるがこれもみんなの願望の具現化なのかもしれない。
ちなみに本作は41分の不完全版(佐分利信絡みのドラマが全部カットされている)が国立映画アーカイブに保存されているが、なぜか某動画サイトにほぼ完全な69分バージョンがアップされているのも謎。どこかに公式で発表されていないフィルムがあるのだろうか。