菩薩

ピノチェト・ケースの菩薩のレビュー・感想・評価

ピノチェト・ケース(2001年製作の映画)
4.0
国を超え司法の手にかけられる事になったピノチェト、その裁判及び周辺を取り巻く論争の様子と、その政権下において拷問ないし家族を「失踪」させられた被害者達の実態に迫ったドキュメンタリー。彼・彼女らが話す拷問の実態が余りにも悲惨、あるものは長時間電気ショックを与えられ、またあるものは「空手」と称し殴打を浴びせられ、レイプに精神的虐待、人格を奪い物同然に扱われ、それでも生き抜けただけマシで、多くのものはどこでどう死んだかも分からず、そもそもその出生すら否定され…。残された家族たちはその日をどれだけ待ちわびたことだろうか、それでも結局ピノチェトが裁かれる事はなく、健康状態を理由に堂々の帰還、彼を迎える軍部のお偉い方と、その政権下で富を蓄えた支持者達の笑顔が象徴的に映る。鉄のババアことサッチャーなんて最後の最後までピノチェトをお友だち扱い…変な髪型しやがって。もちろんチリなんて人生に全く関係のない遠い世界の話だけど、それでも為されるべき正義が罷り通らない現実には歯痒さと胸糞悪さを感じるし、被害者達の悔しさと無念は十二分に伝わって来る。しかし彼・彼女らは強い、生き抜いた自らを誇りの思う者すらいる、この歴史的事実に、これからの国際社会はどう向き合っていくのだろう、正義とは何かを問う有意義な作品。
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