wisteria

ダゲール街の人々のwisteriaのレビュー・感想・評価

ダゲール街の人々(1976年製作の映画)
4.7
先日レビューした『5時から7時までのクレオ』のアニエス・ヴァルダ監督の他作品がいくつかAmazon primeに追加されたので期間中にレビューしていく予定です!

相変わらずお洒落なジャケット写真の本作『ダゲール街の人々』は、監督が長年実際に住んでいたパリ14区モンパルナスの下町ダゲール街を舞台にしたドキュメンタリー作品。半径数十メートル以内の全員知り合いが経営する香水屋、パン屋、肉屋、美容室といった商店街の普通のおじさんおばさんの日々の暮らしをおさめているもの。

含蓄に富んだ綺麗な声のナレーションもつとめるアニエス・ヴァルダ監督との普段の親しい関係をしのばせるくつろいだ雰囲気が画面からほのぼのと伝わってくる。カメラを向けられていることからくる緊張が少しも感じられない。といっても単に日常描写を工夫なく見せているわけではなく、シンメトリーを活かした、老夫婦の横並びするグラント・ウッドの油絵『アメリカン・ゴシック』を思わせる大胆な構図とかラストの人を食ったような静止画風の動画とか素敵な遊び心もふんだんにあって観ていて飽きない。

70年代ダゲール街の日常に外部からアクセントをもたらすマレビトの役割を果たす奇術師🎩と心地良い郷愁を誘うアコーディオン🪗の音色が作品に彩りを添える。

フレデリック・ワイズマン監督のドキュメンタリーに似た穏やかな充足感を与えてくれる今作だが、一本3時間越えが普通の長大なワイズマン作品と違って80分で気軽にこの素敵な世界観を満喫できる点もおすすめポイントかなと思います!
wisteria

wisteria