【2017年キネマ旬報日本映画ベストテン 第6位】
『サウダーヂ』で一躍その名を轟かせた映像集団「空族」による作品。空族作品はソフト化や配信はしない方針らしいが、衛星放送での放送を親が録画していて観ることができた。
正直いらないシーンはたくさんあるし、登場人物が多くて前半は覚えられないんだけど、後半からは少し絞られてきて概ね何が言いたい作品なのかが分かってきた。
オザワは他の日本人と違って、よく言えば良い人、悪く言えば根無し草。なんとなくどこにも足がついていないしつけようとしない。そんなオザワに変化が起こるのが海のシーンからの銃購入シーン。
他の人のレビューを読んでなるほどと思った。銃というのは「タイで生きること」の象徴的表現なのだと。冨田監督が「銃、女、ドラッグはタイの象徴」ということを言っているらしい。
まあそんな難しいことは分からなくても、「なんかスゴいものを観てる」という気持ちにはなる。個人的にはそんなに長く感じなかった。
映像は美しいし、シュールなシーンもあったりして飽きない。また戦争の爪痕も垣間見えたりと画面を観ているだけで楽しい。
確かにラックとオザワの関係は『月はどっちに出ている』を連想させたし、異国で彷徨う感じは黒沢清の『旅のおわり、世界のはじまり』を思い出した。
いくらでもトンデモ作品になりそうなところを、絶妙で独特なバランスで成り立たせてみせているという点で才能は確かなものがあるでしょう。好きかどうかは別にして。
個人的にはけっこう好きな方だった。今度はスクリーンでちゃんと観たい。