EDDIE

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのEDDIEのレビュー・感想・評価

4.1
「因果応報」「目には目を歯に歯を」の理を支配者構造で魅せる映画。
解釈には時間を要しますが、鑑賞後に考察するのが大変面白い映画です。

まず本作の監督であるヨルゴス・ランティモス。ギリシャ出身の鬼才ですが、きたる2/15に「女王陛下のお気に入り」が公開されるため、彼の作品を観ておかなければと鑑賞しました。先日観た「ロブスター」の世界観があまり合わなかったので、この監督と自分は相性が悪いのかもと感じましたが、本作を観てその感覚は杞憂だったと感じた次第です。

「聖なる鹿殺し」は原題が“The Killing of a Sacred Deer”です。
なかなかタイトルの本意がわからないまま観たのですが、まさに冒頭に書いた「目には目を歯に歯を」を映画という作品を通して我々に教えてくれたんだな、と。
コリン・ファレル演じる心臓外科医のスティーブンはとある医療ミスで1人の患者を死なせてしまいます。救えたはずの命を粗末にしてしまったのです。
その患者の息子マーティンを演じたバリー・コーガン。いやね、凄いですよ彼。怪演と呼ぶのでしょうか、めちゃくちゃ惹きつけられました。いい意味でも悪い意味でも。
このマーティンと絡み出すことで、スティーブンの家族には不穏な出来事が起こり始めます。
①身体麻痺
②食欲不振
③目から血が流れる
④死
スティーブンは妻と2人の子どものいずれかを殺さないと、家族に①〜④が順に起きると突然告げてくるわけです。
いやいや、怖いよお前とか思いながらも、息子のボブ、娘のキムが次々に下半身麻痺に見舞われるんですね。
ここから支配者構造を見せながら、スティーブンは選択をせざるを得ない状況に陥っていくわけですが、家族それぞれが生に対する執着をリアルに見せつけてきます。妻のアナを演じたニコール・キッドマンも相変わらずの美しい裸体を見せつけてくれるわけですが、彼女が一番生に対する執着が強いと感じました。
自分が産んだ子どもの命を蔑ろにし、自分が生き残るためにマーティンには服従をしていき、夫のスティーブンにも殺すなら子どものどちらかよね、私たちだったらまた新しい命を生み出すことができるわ、体外受精だってできるんだからとか、もはや狂気でしかありません。

サスペンス要素を取り入れ、人間の欲や怖さをまざまざと見せつけられた本作。
これは次回作「女王陛下のお気に入り」への期待値が高まらざるを得ません。
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