ペイン

永遠と一日のペインのレビュー・感想・評価

永遠と一日(1998年製作の映画)
4.0
カンヌでパルムドールを受賞したアンゲロプロス監督後期の作品。

寺山修司『田園に死す』や、ホドロフスキー『リアリティのダンス』にも共鳴する一人の男の記憶と邂逅の物語。

アンゲロプロス作品なので、世の“一般的な佳作”のようなものと比べたらそれはそれはたいへんに素晴らしいということは前置きしつつ、ただ本作があのアンゲロプロスの最高傑作なのか?と言われると今の私には正直疑問な部分はあった(※私が中年を過ぎたくらいに本作を観返したらもしかしたらこれが一番良いとなる可能性もあるにはあるが)。

なのでアンゲロプロス故に求めるハードルが上がり過ぎてしまう部分と、また私がアンゲロプロス作品を多少見慣れてきてしまったのか、あるいはアンゲロプロス自身がキャリア初期から徐々にマンネリ化してきてしまったのか。それは謎だけれど、どうも初期傑作『旅芸人の記録』を初めて観た時のような衝撃や、中期傑作『霧の中の風景』のような途方もないピュアさは本作からは感じられなかった。なので私からしたら『旅芸人~』の時点でアンゲロプロスはパルムドールなのである。

芥川賞などがだいぶ遅れて作家に賞を与えるのと同じで、カンヌとアカデミーもあげるべきタイミングで大賞を与えないことが多い。あのマーティン・スコセッシは『タクシードライバー』や『グッドフェローズ』でオスカー無冠で、なぜかしょうもないリメイク作『ディパーテッド』が作品賞を獲ったり、またポン・ジュノは『パラサイト 半地下の家族』はたしかに素晴らしい作品ではあるものの、『殺人の追憶』や『母なる証明』の時点で余裕でパルムドールクオリティーであったと思う。

前半少し勢いがないなとは思ったものの、とはいえ中盤からのギアの入り方、その転調っぷり等には本作でも痺れた。というか本当にワンショットワンショットにかける熱量が凄すぎる。
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