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ハクソー・リッジのKientopp552のレビュー・感想・評価

ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)
1.0
 M.ギブソンは、2004年に、自らが共同製作し、共同で脚本も書き、監督した作品『パッション(受難)』を発表したが、この作品は、史実に忠実に、登場人物がアラム語、ラテン語、ヘブライ語を話すという、興味ある点を除き、カトリック派原理主義的観点から描かれたキリスト受難の物語りであり、ストーリーには、典型的に反ユダヤ主義の要素を含んでいる点で問題があるものである。さらには、キリストの磔をリアリスティック過ぎに描いて、これまた当時は、物議をかもしたものであるが、このリアリズムは、本作における戦場での死や負傷を描くリアリズムに通じるものであり、なるほどなと思える。

 一方、M.ギブソンは、戦争映画において、「英雄譚」を好む。アメリカ独立戦争における一エピソードを描く『パトリオット(愛国者)』は、「悪」の大英帝国軍に対する、アメリカ植民地入植者の民兵軍の「愛国者」ぶりを強調する。さらに、ベトナム戦争の初期の時期の戦闘を描く『ワンス・アンド・フォーエバーWe Were Soldiers』では、品行方正なアメリカ軍兵士が、共産主義勢力軍たるベトナム人民軍の兵士と戦う。人海戦術で押し寄せてくるベトナム軍兵士の攻撃を、M.ギブソン中佐が率いる米軍は、自分の陣地にナパーム弾を落とさせることで辛うじて、阻むことができたのである。さて、この米軍対アジア人兵軍隊の構図をそのまま本作に置き換えると、正に同じ構図であり、日本軍の兵士は、二人の例外を除いては、単なる戦う「人もどき」に描かれている。

 確かに、本作は、実際にあったという、「本当の」話しを映画化したものであるが、すべてが史実に忠実であるか、疑う必要があるのではないか。
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