わたふぁ

蜂の旅人のわたふぁのレビュー・感想・評価

蜂の旅人(1986年製作の映画)
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製作された1986年のギリシャは、150年続いた王政に幕を閉じ、軍国独裁政権の時代も乗り越えて、今の共和制で落ち着いた頃。
それまでのモヤモヤを晴らす勢いで高度経済成長期を迎えた。そこから来る豊かさなのか、別人の映画のように明るい。国の情勢に敏感に反応してきたアンゲロプロスらしい、と言えばらしい。

何よりマルチェロ・マストロヤンニというスターを起用している時点で感激する。
これまでの2作品で“有名俳優ナシ・予備知識必須・そもそも難解・そして長い”という苦行(あ、言っちゃった)を強いられたわけだが、こういうアイコン的存在が一つあるだけで、一気に映画は見やすくなる。

...愛娘に結婚された初老の男性が一人旅に出て、家出少女を拾ったり、旧友に会いに行ったりするお話です。

マストロヤンニと言えば「甘い生活」や「8 1/2」「女の都」から来るセックスシンボル的存在のイメージが強いが、晩年は「ジンジャーとフレッド」のような男の“情けない”面も演じて魅せた。

ただカッコイイだけではない、かつての色男・マストロヤンニにぴったりの役柄だった。
しかし監督は長回しの鬼。俳優のスター性に流されることなどない。

終盤のラブシーンで、とうとう画が吠えた。