キミシマユウキ

エリスのキミシマユウキのレビュー・感想・評価

エリス(2015年製作の映画)
3.6

エリス島……
それは希望と、嘆きの島

19世紀後半から約60年の間ヨーロッパからアメリカやってきた移民は必ずこの島を通らなくてはならなかった。
そこでは夢を叶え入国審査出来た者、本国へ送り返された者、長期間拘束され続け死亡した者の魂がさまよっているかもしれない……

そんなエリス島の廃墟と化した元移民局にインスタレーションを展示し、ナレーションを吹き込んで短編映画にしてしまったのが監督のJR(電車じゃないよ)
元々アーティストということもあって訴えかけてくるような作品に仕上がっていた。
日本人には馴染みのないエリス島について学べるいい機会となった。
ヨーロッパ系アメリカ人が観ればまた印象は変わってくるだろう。

ナレーションをロバート・デ・ニーロでキャスティングしたのもニクイ演出だ。
彼は『ゴッドファーザーpartⅡ』にてエリス島でアメリカにやってきたヴィトーを演じた張本人。自身もイタリア系移民の血筋ということもありピッタリだろう。
年老いた彼が枯れた声で発するエリス島でのストーリーの数々、哀しげな表情は切なくて堪らない。渋くてかっこよすぎる。

「私はたどり着けなかったすべての人々ゴースト、たどり着くのないすべての人のゴースト……」

デニーロの声を聞きたい方、そして希望の国アメリカの入口だった場所エリス島について知りたい方にはオススメの作品。