優しいアロエ

オールド・ジョイの優しいアロエのレビュー・感想・評価

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)
3.8
 『Old Joy』は、ふたりの男が秘湯を目指して2日間の旅をする簡素な物語だ。

 ケリー・ライヒャルトは『River of Grass』製作後、この長編第2作を完成させるまで実に12年間の月日を必要とした。しかし、その期間もいくつかの短編・中編をコンスタントに発表している。商業映画とは距離を置き、自由な製作を追求してきた彼女にとって、映画の尺の長さはあまり問題ではない。本作にしろ『ウェンディ&ルーシー』にしろ短編映画の延長線上に乗っかったような趣がある。これらはアート・プロジェクトのような自適な製作の結果、たまたま長編の区分に入っただけの話なのだ。

 さて、本作は水彩画デザインのジャケットがすばらしく、これがどこか波長の合わない二人の関係性を暗示している。二人はこれまでも旅に赴いてきた旧友の関係にあるらしいが、そこには〈家族を持ちはじめたorひとり悠々自適な暮らしを送る〉という差異から絶妙な距離感が生まれている。

 ようやく温泉にたどり着くも、オレゴンの森林に「裸の付き合い」のような奇跡が訪れることはない。二人も我々も待望していたその瞬間は、あまりに呆気なく流れていってしまう。ただし、カートがマークの肩を揉むシーンには妙にセクシャルな匂いが漂っている。ライヒャルト作品一貫の製作プロデューサーにして盟友でもあるトッド・ヘインズの存在がまた邪推を誘うが、英語字幕ゆえ理解もまちまちだろうから、あまり深入りはしないことにする。
(字幕追うのに必死で風景や表情にまで目がいかない...)
優しいアロエ

優しいアロエ