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ローマ法王になる日までのpherimのレビュー・感想・評価

ローマ法王になる日まで(2015年製作の映画)
4.3
初のアメリカ大陸出身である現ローマ法王フランシスコの若き日に焦点を当てた本作は、社会主義政権と軍事独裁がせめぎ合った南米現代史全体をも広く照らし出す。神父らの暗殺へと先鋭化する弾圧と、ドイツ留学や辺境部教会における内面の格闘とがみせる描写の振幅は鮮烈。

『ローマ法王になる日まで』は、初のイエズス会出身の法王でもあるフランシスコのオーソドックスな成長譚の形式をとる一方で、貧者の側に立つキリスト教思想として南米を席巻した《解放の神学》が、時の政権からもローマ教皇庁からも敵視されるといった複雑な時代状況も手際良く整理され興味深い。

法王フランシスコはドイツ留学時代に《結び目を解く聖母》の絵にふれ、「初めて他者の為でなく、自分のことを考えても良い」という赦しを感じ深く癒される。この挿話を描く重要場面がイタリアで切られたのは、個人の内面描写が過ぎるとの判断からかも。

本国削除シーン言及ツイ(公式): https://twitter.com/romahouou_movie/status/870930276796387329

《結び目を解く聖母マリア》は、生活上の複雑で困難な問題も、結び目をほどくように解決されることにマリアが助けを与えるという挿話が元。「悪魔の象徴である蛇の頭部を足で押さえながら、白く長いリボンの結び目を解いている黙示の日の聖母が描かれている。」by wiki
画像右は現法王執務室。

『ローマ法王になる日まで』ダニエレ・ルケッティ監督にお話を伺いました。
中南米神父期の背景である軍事独裁と“解放の神学”やドイツ留学期を描く巧みさ、’19年作『ワン・モア・ライフ!』新作『靴ひものロンド』へ連なる大胆なシーン構成など。

[2017年拙稿] →http://www.kirishin.com/2017/06/10/41160/


2019『ワン・モア・ライフ!』https://twitter.com/pherim/status/1371007664243712005
2020『靴ひものロンド』https://twitter.com/pherim/status/1568888576255094784
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