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センチメンタルカラスのdm10foreverのレビュー・感想・評価

センチメンタルカラス(2014年製作の映画)
3.5
【重い思い出】

本日より公開の「ケイコ目を澄ませて」を記念しまして、今回は岸井ゆきのちゃん出演のショートフィルムをチョイス。
作品は15分という尺で、彼女自身も主演という立ち位置でもないので登場時間で考えれば数分ではありますが、彼女が出るだけで画面にも熱が生まれるという、まさに「女優の存在感」。
・・・え?それはdmの好みで勝手にそう感じてるだけ?
まぁ~いいじゃないのぉ~(エレキテル連合風)。
ほかにも岡山天音など若手だけどしっかりした俳優さんが出ていて、そういった面では大崩れはしなかった印象。

―――風俗店のエロキャラクターのデザインなどで生計を立てているウェブデザイナーのユウスケ(川口覚)。といいつつ孫請けのハジメ君(岡山天音)が居てくれてこそ・・・でもあったが。

ある日ハジメから打ち明けられるユウスケ。
「ユウスケさん。この仕事、もういいっすかね?もうちょっと仕事は選びたいって言うか・・・この前も彼女に見られちゃって・・・」
「え?そんなこと?これだって立派な仕事じゃん。とにかく締め切り守って!」

ユウスケは自分でも本当にこれが「したい仕事」なのか分からなかった。
だからハジメに対して強く言い放った言葉は、そのまま自分自身に言い聞かせて(納得させて)いる言葉でもあった・・・。

そんなある日、ユウスケの元にカラスの妖精(?)(北浦愛)が現れる。
「あなたが捨てたもの、何かひとつ取り戻せますよー」
そういってカラスはいくつものゴミ袋を取り出し、その中からユウスケが過去に捨てた沢山の思い出の品を取り出していく。
昔使っていたガラケー、学生時代の卒アル、漫画家を目指していたころに使っていたペン・・・。
そして「捨てられた」と言い張る元カノ(岸井ゆきの)も出てくる。


「漫画家は?夢はどうなったの?捨てちゃったの?」
「いや、捨てたんじゃなくて・・・・」――――


カラスっていつもゴミ袋を漁っているっていうイメージで、(生きるために奴らも必死なんだよな~)なんて偉そうな目で見ていたけど、実は「人の思い出を探していたのかな」っていう着眼点は面白い。
そうだよね~ゴミ袋に入れて捨てるのは「ごみ」でもあり「個人のプライバシー」でもある。

人に見られたくないもの
もう二度と見たくないもの
何かの決心のために断腸の思いで手放すもの・・・

カラスはゴミ袋の中からそういった人々の思いを嗅ぎ取って見つめ続けているのかもしれない・・・。
だからカラスは市街地に多いのかもね。
「ゴミ袋に詰められたいくつもの「人々の過去」」
自分はとっくに捨てたつもりでも、カラスはそのものの大切さを嗅ぎ分けていたのかもしれない。
だからユウスケの前に現れたのかもね。

「捨てたんじゃない、選んだんだ」

今までは「選んだ」という言葉を使うことで自分自身の中でかろうじて保っていたポジティブな気持ち。
でも本当は後ろ向きな自分を隠すための虚勢でもあった。
「捨てたんじゃない」まだ自分には残っている。
そこからもう一度始めてもいいじゃないか。
折角カラスが拾って取っておいてくれたんだから、このチャンスこそ「捨てないで」。

物語としては「可もなく不可もなく」というところでそれほど目新しさみたいなものは感じなかったけど、演者さんたちの演技は安定しているのでそれなりに見えてくるっていう点では良かったかもね。
何にせよ「岸井ゆきのボーナス」でちょっと点数おまけしておいたよ。
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