ポルりん

ママ友のポルりんのレビュー・感想・評価

ママ友(2013年製作の映画)
3.4
誰もが持つ嫌な部分を上手く表現した、8分程の短編映画。

あらすじ

ママ友が自宅に訪れて、気になる話をする。
それは、共通のママ友に起こったある事件のことについてだった。


本作を鑑賞する前は、私も何度か見たことがあるママ友同士の陰口がメインで単に視聴者を嫌な気分にさせるような作品だと思っていた。
しかし、鑑賞後に単に嫌な気分にさせるだけではなく、色々と考えてしまい妻と本作について30分近く語り合うような中々に深みのある作品であった。

大まかな話の流れとしては、ママ友Aが我が子供(サキちゃん)を連れてママ友Bの家に訪問し、とある事件について語り合う。
始めの内は、事件の被害者とその母親について同情するような会話をしていたが、話をしている内に段々と口が軽くなっていき、最終的にママ友Bが本音を漏らすといったものである。

正直、ママ友Bの話は観ていて気分のいいものではないし、何かしら違和感を覚えるようなフレーズが会話の合間にちょこちょこ出てくる。
そして表情に関しても、同情する会話の時と本音が漏らしている時では微妙に印象が違う。
何というか、一見始めと表情が変わらず笑顔を振りまいてるように見えるのだが、その笑顔の奥から嫉妬や妬み、狂気といった負の感情が滲み出ており、それが非常にリアルで恐ろしい。

対するママ友Aは、一般的な女性であり視聴者目線に近いポジションである。
割と難しい役で、ある意味一番重要な役だとは思うのだが、一般的な表情、行動、そして皆がするであろう会話の返しを上手く体現しており、その役割をしっかりと果たしていると思う。

演技に関しては文句の付け所のない良い演技をしていると思うのだが、演出や映像、脚本に関してもかなり良いと思う。
本作は意味が分かると怖い話に近い部類だと思うが、どちらとも取れるような上手いセリフ回しを使っており、完全な答えが明記される訳でもない。
またフレーミングやカメラアングルが上手く、恐らく物語の鍵であろう重要な部分を自然に見えないようにしている。
特に子供の姿・・・。
そして暗示の掛かったような終わらせ方・・・。

恐らくだが、とある事に関しては人によって全然違う答えが出るだろう・・・。
現に妻に私の解釈を述べたら、一蹴されてしまったし・・・。
こういった明記されない答えについて語り合うのが好きな人なら、本作を楽しむ事が出来るかもしれない。
そして、人間の嫌な部分を見たい人も割と満足するのではないだろうか・・・。

そういえば、劇中でママ友Bがママ友Aのある秘密を暴露するシーンである。
私だけかもしれないが、このシーンを観て去年発生した「北海道男児置き去り事件」が頭に浮かんでしまった。

この事件が起きた当時のマスコミは、始めの内は大和君(行方不明になった男の子)の安否を心配するような形をとっていた。
しかし、時間が経過するにつれ次第に大和君の安否ではなく、事件当日の父親の行動が怪しい、実は虐待してたんじゃないか、もしくは・・・。
といった事がメインになってしまい、また批判を受けないよう曖昧に報道しているように思えた。

周りの人も似たような感じで、この事件について会話をする時、始めは大和君の安否から入るが結局は父親の話になってしまう。
勿論、父親の心配ではなく・・・。
そして私自身もこれに近いような会話をしていた。
傍から見たら、私もママ友Bと似たような会話をしていたんだろう・・・。

確かにママ友Bを見ていると嫌な気分になるし、大半の人も同じだと思う。
でも、こういった嫌な部分って単に口にしないだけで誰もが持っている一面ではないだろうか・・・。
そういえば心理学をかじっている友達から聞いたことがある。

「嫌いな人=嫌いで認めたくない自分自身の内面を出している人」
ポルりん

ポルりん