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ノー・ホーム・ムーヴィー

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スターチャンネルEX

ノー・ホーム・ムーヴィー

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スターチャンネルEX
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  • 独占作品を中心に日本初上陸の最新海外ドラマが視聴可能
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『ノー・ホーム・ムーヴィー』に投稿された感想・評価

netfilms

netfilmsの感想・評価

4.3
 冒頭の激しい風に見舞われる木々のショットの揺れが何か尋常じゃないほどに作家の感情を震わせる。観る側としてははっきりと「長ぇよ」と思うものの、次のショットでは肥満男の無邪気で平和な背中を映し出す。次のショットは母親の家のほとんど手の行き届いていない庭の映像を長々と映し、肝心要の母親はなかなか出て来ない。シャンタル・アケルマンのこのドキュメンタリーに対する消極的な編集姿勢は、母親との距離を最期まで推し量ることが出来ずにいた娘シャンタルの姿を言わば逆説的に炙り出している。自分を産んでくれた母親でありながら、得体の知れない赤の他人でもある。然しながら彼女がアウシュビッツから辛くも逃れることが出来たおかげで、自分自身の人生が始まった。ブリュッセルとニューヨークとの二重生活で過干渉な母親から逃れた頃の日々は『家からの手紙』で描いているのと一緒。つまり若い頃の彼女は母親からの手紙や連絡を一切無視し、我が道を行く。なのだが後年、母親の手紙の文面を一字一句変えず、母親の言葉を母親になったつもりでアフレコするアケルマンは狂気にも似た世界をひた走る。かつて同一視出来ていなかった母娘がこうして同一視される。一度同一視してしまえば今度は娘の方から母親への激しい愛の応答が始まる。

 不器用ながらとにかく母親の内面から言葉を導き出そうとするシャンタル・アケルマンの意欲にやられてしまう。『家からの手紙』では心底鬱陶しかった過干渉な母親からの問いをここではブーメランのように娘があまり体調も良くない母親に繰り返す。それ自体が大変暴力的で、家族とはいえ空気を読まなさ過ぎているようにも見える。率直に言って老い先短い母親が大変気の毒に思えてならない。女の居場所だと規定された台所では母娘の率直な会話が進められるが、それに対しても娘シャンタルは異を唱え、母が知らなかった父の一面をとうとうと語るのだ。ここではないどこかを夢見て、実際に旅立った娘シャンタルの世界を母は知らない。だがシャンタル自身も母親との閉じた世界に縛られ、ここではないどこかにいるものの母親が無性に気になるという矛盾に苦しめられる。中盤のゴツゴツとした岩肌の車内から撮られた映像がまた観客にとっては地獄なのだが、シャンタルの奇妙な応答は外の世界を知らずに人生を終えた母ナタリアへのはっきりとした私信にも感じられる。後半、汚いどぶ川の水面を映し続ける様子にシャンタルの孤独な影が映っている。どこにいても孤独な自分。そしてどこに行こうとも自分を愛してくれた母親。母親の死から1年半後、シャンタル・アケルマンも自死でその生涯を唐突に閉じた。双極性障害に苦しんでいたという。
のんchan

のんchanの感想・評価

3.6
『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』があまりに素晴らしく、まだ余韻が残っている中、他作品を観る前に先にこの遺作を鑑賞。

アケルマンの原点となる母親のポートレートであると同時に、自身の映画史の出発点を探るドキュメンタリー。

ポーランド系ユダヤ人である母ナタリーの日常を固定カメラで映し出している。
キッチンで向かい合って食事しながら、過去の話を紡ぐように誘導して言葉を引き出す。

どれくらいの撮影期間だったのか?月日が流れているのが母親の老い方で伝わってくる。
それほど多くの言葉はないものの普通の母娘の会話も多くて微笑ましい。
アケルマンがアメリカにいる時、Skypeでやり取りするのが映し出されるが、何度も切るよと言ってもいつまでも切れない母娘😁

母親が眠りたがる。起きていられなくなりソファで昼寝。その度合いが多くなっていく過程も映していく。

撮影途中でお母様は亡くなったようだが、誰もいなくなった実家の部屋を定点カメラで映すことで寂しさが表れていた。

完成後に自身も他界。本人が出ている作品はやはり貴重品ですね。


ただ、失礼ながら無駄にフィルムが回る所が多く(延々と風に揺らぐ枝葉、誰も居ない部屋、車窓からのブレた風景等)もう少し編集して欲しかったと感じてしまった。

娘が母を感じるためのホームビデオ📹にしか思えないのは、ただただ私の芸術性のなさでしょう💦
東京日仏学院にて開催中の「シャンタル・アケルマンをめぐって」より、2015年製作、アケルマンの遺作となったドキュメンタリー作品。

ポーランド系ユダヤ人であるアケルマンの母親をアケルマン自身が撮影し、故郷、家、家族を通して、自身のアイデンティティーの根源を描く内容ですが、同じ日に観た「TAR/ター」に引き続き、難しい映画でした。

最初のほうは、たわい無い母と娘の会話のように見えますが、「撮影する」「撮影される」という関係性の中で見える、言葉を引き出そうとするぎこちなさがあり、少しずつ見えてくる母親自体の衰えや衰弱する姿に対して、アケルマン自身がどのようなメンタルで臨んでいたのか。

私自身も終末期の母親を看取った経験がありますが、その苦しみや衰弱していく姿に対しての自身の無力さを日々感じていましたし、ましてや撮影しようという余裕すらなかったです。

撮影するだけではなく、自ら編集して映画という形になったものは、家族や介護人を映すだけでなく、延々と続く砂漠や、アケルマン自身の呼吸だけが聞こえる彷徨うような様々な場所の徘徊が続くシーンもあり、本当にそれが意味するところは分かりませんが、アケルマンの内側にある何か、または困惑した心情を残す意義があったのかもしれません。

ユダヤ人であるルーツを持ちながら映像作家として生き、母親の影響から反発しつつ、女性の生き方を描く中で、時に「家からの手紙」や「アンナの出会い」でも母親を意識した作品作りをし、その生き様は「ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地」でも、大いに意識した作品性として現れています。

そのような大きな影響を与えていた母親が亡くなり、失ったものの大きさをが今作の完成にも少なからず影響があったでしょうから、完成版が支離滅裂に見えてしまったとしても、それを無下にできないですし、その喪失感がこの映画そのものだったでしょうから、静かに見守るだけでよいのでしょう。

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