ゼロ

海よりもまだ深くのゼロのレビュー・感想・評価

海よりもまだ深く(2016年製作の映画)
2.3
夢見た未来とちがう今を生きる、元家族の物語。

大きなドラマがあるわけもなく、日常に潜む闇を描いわけでもない。阿部寛さんが演じる主人公・篠田良多の日常を切り抜いた作品です。

主人公・篠田良多は、過去に島尾敏雄文学賞を受賞した経歴があるのが、その後の作家生活は鳴かず飛ばず。出版社からは漫画の原作をやらないか?と打診があるものの、プライドが許さず二の足を踏む。好きなことはギャンブルで、愛想を尽かした妻に逃げられ、離婚。月に1度、息子・真吾に会うのが楽しみだった…。

日常としてのリアルは上手く描かれている。特に良多の母である・篠田淑子役の樹木希林さんの演技は、素の姿に見える。樹木さんの発言は、何気ない言葉でも胸に響くのはなぜだろうか。

うだつが上がらない男を阿部寛さんが演じ、様になっている。不器用な男を演じたら見事なもの。

物語としては、元篠田家族が、台風の日に団地に泊る。離婚したからこそ、妻や息子が恋しくなる。そんな女々しいことを言うのなら、結婚している時にやってあげれば良いのに。ごもっとも。

大きな山場もなく、何か解決することはない。大人になったからと言って、大きく何かが変わるわけもない。そんな日常を描いた作品でした。
ゼロ

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