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餌食のblacknessfallのレビュー・感想・評価

餌食(1979年製作の映画)
4.0
今日の追悼上映のもう一本の方。
餌食は今だにソフト化されてないんだよ。前観たのはバウスシアターのクロージングの時だから、6.7年前かな?
いつ観たかは曖昧なんだけど、餌食はなかなか見れないって事情から集中力がいつもより増し増しになってるから、前回の記憶どおりだったね。

これについてはシーンが、脚本がとか細々話てもしかたないと思う。
現実に踏みにじられる者の怒りと絶望がスパークする普遍的なテーマのある映画なんだけど、ラストの歩行者天国での銃乱射とか、なんか今観るとベタで古い、手垢のついた反逆心の暴発って気がして、すげぇよー観てくれよ!みたいなテンションで推せねえんすよな、、笑

でも、こーしてレビュー書いてるわけなんで、観てほしいって気持ちもちゃんとあるんだよ!ではどこを観てほしいのか?

それはもうユーヤさんの佇まいと音楽だよ、音楽を観るとかおかしいけど、映画で流れる音楽はもはや観てるも同然なんだよ!(意味不明)

ユーヤさんはアメリカ帰りのミュージシャン。かの地でレゲエに目覚める。今や有名プロモーターになった昔のバンド仲間に自分がニューヨークで見出だしたレゲエ・バンドのプロモーションを頼むため帰国する。

この帰国シーンがかっこいいんだよ。ユーヤさん、アーミー系のカーキ色ツナギに肩にラジカセかけて頭にはデカいヘッドフォン、そしてkool🚬のカートンを小脇に挟んでる。
ハッキリ言ってこれ、レゲエでもないし、他のロックのどの分野にも当てはまらないコーデなんだけどメチャクチャかっこいい!何か分からないけど先鋭的な雰囲気にヤられる。

そして、このヒップすぎるファッションで路線バスのシートにどっかり座り込み、おもむろにマリファナ・タバコを吹かし始める!隣の席の白人美女が焦って「日本で吸っていいの!?」とユーヤさんに。
ユーヤさんは「問題ねえよ、それよりもっと持ってるから、おれと一緒に来ない?」と言ってマリファナ・タバコをエサにナンパする笑 しかもナンパは成功し、帰国早々白人美女とベッド・イン!ちなみにこの両者のセリフ、英語で字幕が付いてないのでおれの拙い英語力での再現なので多少間違ってるかも知れないです、、笑

奇抜なファッションにレゲエにマリファナ、白人美女とベッド・イン、とても70年代後半の日本が舞台の映画とは思えない展開。この映画の良さはこの洋画チックなグルーヴをかっこよく成立させてるとこなんだよね。

成功要因はユーヤさんだと思う。この映画で流れるレゲエって、ピーター・トッシュにマトゥンピとかなんだよ!まさにこの時代のリアルなレゲエなんだよ。特にピーター・トッシュはボブ・マーリーと同じグループにいた人で、その徹底した反権力的姿勢はボブ・マーリーより強硬なんだよ。この絶妙な選択はユーヤさんがしたんだと思うんだよな。若松孝二監督は過激で反逆的なものは好きだけど、それは自身の思想を代弁させる手段としての関心しかない人だから。なので若松孝二監督がこの時点で日本でほとんど話題になってないジャンルの音楽を知ってたとは思えない。
そうなるとどう考えてもユーヤさんでしょ笑

ユーヤさんは音楽でもファッションでもロック魂を感じるものが好きで、常に時代に感度のアンテナを張ってた人。だから餌食で画かれるレゲエは今見てもお笑い草にならないんだよ。
これは日本映画ではかなり稀有なことだと思う。日本映画のロックの描写ってトンチンカンなのが多いじゃん(例 BECK、デトロイト・メタル・シティ)

要するに何が言いたいかと言うと、感度の良さでレゲエのかっこよさを素早く察知し、しかも才能ある監督と組んで劇中に本物のかっこいいレゲエが流れる映画に主演するなんて超クール!ユーヤさんはセンスのいいリアル・ロックンローラーだったってこと!
この映画のユーヤさんがロックンローラー度が一番高い、それを堪能してほしい😁💨
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