odyss

偉大なるマルグリットのodyssのレビュー・感想・評価

偉大なるマルグリット(2015年製作の映画)
4.2
【音痴の貴婦人とその取り巻きたち】

1920年代のフランス。
田舎暮らしの裕福な男爵夫人マルグリットは歌うことが大好きで、自宅で開かれるチャリティコンサートなどに出演していたが、実は音痴でその歌はとても聴けたものではなかった。しかし周囲は貴族である彼女に気兼ねして本当のことを言えない。そんな中で、いたずら好きな若い批評家が彼女をパリで歌わせようと画策し、また夫人もリサイタルを開こうと考えて・・・

まさに悲喜劇という言葉がぴったりくる映画だけれど、音痴なのに歌が好きな貴婦人だけが面白いのではなく、彼女を囲む人々――夫や執事、批評家や若いプロの歌姫などがそれぞれに躍動していて、群像劇として秀作になっていることを評価すべきだろう。

伝統や格式を重んじる貴族社会と、それを破壊しようとする急進的な若者との対比など、時代背景もしっかりと描き込まれている。

単に音痴の貴婦人を描いた喜劇なのではなく、幅の広い人間喜劇となっているところが、この映画の優れた部分なのだ。
odyss

odyss