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ある夏の記録のsashaiceのレビュー・感想・評価

ある夏の記録(1961年製作の映画)
4.2
アフリカ専門の人類学者ジャンルーシュ×社会学者/映画理論家エドガールモランが手掛ける野心的実験映画。シネマヴェリテ=真実の映画と呼ばれる人間の隠された深層心理、カメラによって現実を再構築する実験。ソ連のКино правда から着想を得たらしい。あなたは幸せですか?の街頭インタビューから始まるインタビュー映画かと思いきや中盤ガラッと変わり、最後で驚かされる。同時録音と軽量カメラで撮影されたかなり初期のフランス作品にも関わらずかなり真新しさを感じることができる作品。ジャンルーシュは120本近く映画を残しているくらい映画監督としても著名らしいが今回初めて彼の作品を見て、被写体となった人たちに映像を見せてフィードバックをするスタイルがすごく興味深かった。土木エンジニアとしてアフリカのニジェールで働き始めその地に魅了され、自分でカメラを撮って残すようになった彼は西アフリカ専門で「私は黒人」という作品でゴダールに賞賛されたらしい。こちらも見てみたい。エドガールモランに「あなたは黒人のことはよく知っているけどフランス人について何を知っているか。フランスでフランス人を撮ってみたらいいじゃないか」と言われフランスが舞台の本作品を撮ることを決めたらしい。
やっぱり最後の展開の衝撃。撮られた人たちが自分達の映画を見て、彼らの反応を見る。役者になっていたり露出狂になったり。カメラ越しの彼らは真実なのか、偽りなのか。互いに言い合う議論が面白かった。マリルーめっちゃ演技派に見えたけど、手が震えたりシリアスなところで笑顔見せたりその不可解な反応がすごく美しかった。。
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