ドント

スランバー・パーティー大虐殺のドントのレビュー・感想・評価

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 1982年。高校生の女子が開いた、両親不在の自宅でのパジャマパーティー、スケベな男子に加えて脱走した殺人鬼も紛れ込み、でっかいドリルがゴリゴリゴリ~ッ! 男女平等でゴリゴリゴリ~ッ!
 ロジャー・コーマン先生がプロデュースの映画であるからして必然、すっごい低予算のスラッシャー/スプラッタホラー。お金はないけど適宜、グロや残酷は効いているし、ほどほどにスリルもある(シャワー室のシーンとかよかったですね)。80年代なので女子のヌードも惜しげなく出てくるし男子が家を覗き見て「グフフ!」するなど現代ではNGが出そうなシーンもある。しかし、不思議とエロくない。
 女子たち(高校生には見えないが、それはさておき)はサービス的でもなく媚びもない。服装はセクシーなもののクールさが先に来る。裸を撮る時のカメラの感じも淫猥でなく、普通に脱いでるのを普通に撮っているように感じる。変な言い方だが、すごく健康的なのである。若く溌剌としているし、みんな普通に性欲がある。主人公だって男の裸が載ってる女向けエロ雑誌「プレイガール」を隠している。女子会の様子や会話も作り物めいていない。
 一方で男子勢はどうにも頼りなく、恋人持ちもいるけれどなんだかウスラボンヤリしたボンクラである。頼りないなぁと思っているとクライマックスになる前に全員死ぬ。勇敢に戦う男はひとりも残らない。女子vs殺人鬼の図式である。その殺人鬼氏、シャレたお面やキモいマスクなどはつけておらず、ただのオッサンである。凄い容姿などでもなく、ドリルで人を殺すただの中年男性である。
 こういう部分を「まぁコーマン先生だから……」と見逃すことは可能だ。しかしながら本作は監督と脚本が女性、というのを考え合わせると、スラッシャー映画への批評性が浮き上がってくる、ような気がしないでもない。エッチなことをする間もなく男衆は死ぬし、男女の別なく雑に殺される。それに殺人鬼氏の得物はドリルで、コレを人の体に突き刺すわけであるから、これはもうそういう暗喩である。事実足を開いた後ろ姿の股の間から長いドリルが下がっているショットがある。モロにそういうことなのだ。
 主人公は事件現場の家の隣で妹(妹には見えないが、それはさておき)の面倒を見ており、お隣を気にしながら最後の10分くらいまで惨劇に気づかない。妹が死体の詰めてある冷蔵庫をノールックで半分開けて、主人公が「やめなさい……」と叱って閉める、というのが二、三度繰り返される。ここ、スリリングにも見えるしメタなギャグとも取れる。結局主人公と妹が殺人に気づかぬまま映画が終わったら画期的だなぁ~、とか考えていたけど、まぁさすがにチャレンジングすぎますね。
 そんなこんなと色々深読みできる作品でありながら、全部ただの妄想と片付けることもできる。何故ならコーマン印なので……。しかし深読みというのは創作の醍醐味であるからして、こういう楽しみ方もある、そんな感想だと思っていただきたい。でもこの出演者の男女比で、死者数のバランスが同じというのは「何か」あるよなぁ……。なお75分なので、ホヘーッと観るにもベストな長さでベストな美味しさです。
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