Kuuta

ゴジラvsコングのKuutaのレビュー・感想・評価

ゴジラvsコング(2021年製作の映画)
3.3
前作絶賛派なのでややガッカリ。

前作の「ダメさも素晴らしさも全部入ったゴジラ映画」から「コングwithレジェンダリーゴジラ」という、モンスターバースとして本来あるべき姿に戻った印象。この映画が世界的にヒットしたのは、前作があまりにカルト的だったことの裏返しでもあるなと。

(とはいえ伊福部音楽でゴリ押してくれなくなったのは残念。ファン以外からするとどっちでもいいのかな)

▽ゴジラ映画としては?
私は前作がゴジラ映画としてほぼ100点だと思っている(劇映画としては40点)。その高揚感のまま、今作にもかなりの期待を懸けていた。

ところが、今作のゴジラは扱いとしてはゲストに近い。「最強」「人知の及ばない災害」として、ひたすら街を壊す存在だ。ゴジラ映画としては評価の仕様がない。

ゴジラ映画のフォーマットを借りた、「コングの映画」と言うべきだろう。こちらの期待が外れただけとも言えるが、ゴジラファンの自分としては、シンプルにそこが低評価の理由です。もっとゴジラが見たかった。
 
▽「自由なコング映画」という斬新さ
今作で特筆すべきは、コング映画の大量のお約束を踏まえつつ、歴代のコングを殺してきた「落下」からの解放を描いている点だと考える。

多用されるワンカット風にグルグル回るMCUな撮影は、伝統的な映画が縛られてきた重力を無視した表現である。

今作のコングは、そうした潮流に乗るように、高いところから落ちて死ぬ「お約束」を突き破って、無重力空間に向かう。崖から飛び立ち、反転した世界に手が届いた瞬間、彼はコング映画の歴史を更新したと言える。

コングの中の重力への恐れは、ゴジラが彼を踏みつけるシーンや、海底に引きずり込もうとするシーンにも表れている。重力を無視して大穴に飛び込み、その先に新たな世界を見つける。それはコングにとっての革命だった。ゴジラが君臨する星で、コングは反転した世界の王となる。

モンスターバースが始まるまで、アメリカのコングは「初代のリメイク」しか存在しない、ゴジラ以上に狭い世界観だった。ギャレス版、ドハティ版が「ハリウッドの新しいゴジラ像」を作り上げたのと同様、今作は新しいコングの在り方を提示している。そこが面白いと思った。

▽USJミーツWWE
「アスカ来日」な海上アクションでは、水中と海面をカメラも怪獣も何度も行ったり来たりする。日本の特撮では無理な映像だし、ここは新鮮だった。

終盤の香港決戦ではとにかく「怪獣とカメラを動かす」事に力を注いでいる。熱線と格闘が入り乱れる中、怪獣の顔や身体のすぐそばをすり抜けていくジェットコースターのようなカメラが印象的。

遮蔽物や中継映像を通した恐怖を煽るギャレス版や、神としての畏怖を込めていたドハティ版とも異なる、極めて素直に観客を楽しませようとする映像だ。USJのアトラクション映像のような。ちょっと単調だったが。

一口に「怪獣プロレス」と言っても、こうした複雑な撮影は着ぐるみの日本映画には出来なかったこと。アメリカ仕込みのど付き合いエンタメの最高峰、WWEにコングとゴジラが出ている感じだなぁと思って見ていた。

▽薄味なドラマ
前作の興行的失敗から、今回でシリーズ終了の可能性もあった。それもあって、第3の怪獣の話を詰め込んだのだろう。その結果、見どころが分散し、良さを相殺している。独自の人間ドラマも色々入れているが、どれも非常に忙しなく。「雑ですが何か?」と開き直るかのような地名テロップ連発にくたびれてしまった。

例えば、今シリーズの核であるはずの、マーク博士(カイル・チャンドラー)とマディソン(ミリー・ボビー・ブラウン)親子の絆。前作で大暴れした母親への葛藤や心のすれ違いを乗り越え、家族として再生する話になるのかな、と冒頭で感じたが、一切2人のコミュニケーションは無かった。けれど、ラストでは抱き合って再会を喜ぶ。よく分からなかった。

▽コング=人間
怪獣映画を見るときは「特撮パートと人間パートの繋がり」を意識するようにしている。今作では、コングと人間を重ねる様々な工夫が入っていた。

手話での会話は言うまでもないが、冒頭でリンゴを頬張る男は明らかにコングの食事シーンに重ねられているし、「溺れそうになって水を吐き出す」「広い空間で叫んでみる」「予告にもあったダイハードオマージュ」「まさかのリーサル・ウェポン2」まで、人間と同じ行動を取っている。もう少しスッキリ、かっこよく見せて欲しかったが…。

▽小ネタ色々箇条書き
・タイトルの出方。VSシリーズそのもの。正直ここが1番鳥肌立った。

・紐と網で「吊り下げられる」。コングが電気ショックでパワーアップ、帰巣本能の下り、一本背負いのリベンジ、棒をゴジラの口に突っ込む。どれも「キングコング対ゴジラ」(1962)。

・南極(北極)の地下でコングを利用して特殊なエネルギーを採取するのは「キングコングの逆襲」(1967)。そこで悪い企業が作っていたのが実は…という設定も同じ。

・「キンゴジ」の帯電体質は「ゴジラ対メカゴジラ」(1974)のゴジラに流用されたが、この作品と今作ラストは同じ展開を辿る。

・怪獣の骨を活用した某怪獣。ミレニアムシリーズの設定の流用。
Kuuta

Kuuta