このレビューはネタバレを含みます
表面上の趣旨は理解できました。
しかし物語の深い所まで理解が及ばず。
深い余韻に包まれるであろうラストも、感傷に浸る程には、残念ながら至りませんでした。
そこに至る理由を、記したいと思います。
まずジェロームの行動原理が、良く判りませんでした。
献身的にヴィンセントの補佐をする理由。
彼自身のメリットは何なのか。
契約上の問題かとずっと思ってましたが、それにしてはラストの彼の行動との落差がありすぎます。
事故の逸話などで匂わされるもピンと来ません。
悔しいので帰宅後サブスクで見返しました。
でも、良く判りません。
他サイトの解説を読んで、理解を得た次第でした。
それと思える逸話が少ないなと感じました。
自分の理解力の増大も課題です。
血液や尿など、至る所で検査の魔の手があがります。
だってここはディストピア。
厳重に管理された未来世界。
その魔の手を掻い潜って、主人公がなりすましを図る所が面白い所です。
だからアイリーンとの情事が始まった時には
キターッ!
と思いました。
情事後の女性の中にある体液は、どうやっても誤魔化せません。
秘書と言う立場を駆使して、ヴィンセントを手球に取って、あれやこれやの駆け引きが始まるかと、つい期待してしまいました。
しかし、さにあらず。
結ばれる二人に、自分の性格の悪さを呪いました。
ヴィンセントが犯人と、視聴者にミスリードする展開は良かったです。
しかしそもそも上司を殺してなければ、社交場の警備員を殴って逃走、と言う展開にならないと思います。
捕まったら犯人でなくても検査で不適合がばれ、目的失敗するから殴って逃げた。
そう解釈すると、そんな不測の事態に対応できない設定の荒さが露呈します。
なんだか物語全体の力技感が目立ってしまい、世界観が破綻するようでした。
ジェロームの家に訪問する場面、スリリングでした。
しかしなぜヴィンセントが階下にいるのか不思議です。
別口があるなら、事前にほのめかしがほしかったです。
さすがに不自然でした。
色々書きましたが、物語は落ち着いたトーンで、役者の演技も良いです。
また70年代オマージュのような、美術やデザインは特に好きでした!
ヴィンセントの行動と、もたらした結果には胸が熱くなります!
遺伝子ではなく価値をつけるのは行動、なのかもしれません。
「風にもてあそばれた」
やってやられる、やりとりも素敵です!
ジェロームの行動と最後の印象を結びつける強いフックがあれば、私はもっと好きになれた作品です。