ゑぎ

フォー・ミー・アンド・マイ・ギャルのゑぎのレビュー・感想・評価

3.5
 本作も『青春一座』同様、ボードビルショーについてのリスペクト文が冒頭に掲示される。ファーストカットは走る汽車。小さな駅(中継地)の場面で、ジーン・ケリーが汽車から出てくるが、これが彼の映画デビュー作ということだ。既に偉そうな役で、まったく新人には見えない。ジュディ・ガーランドも汽車のステップに現れるショットで登場するが、このショットは特別な照明(女優ライト)が使われている。

 最初の舞台のケリーのダンス、やっぱり凄い。一見して天才だと分かる。ガーランドも、同じ舞台に立つが、彼女はジョージ・マーフィのチームの一人だ。ケリーは一匹狼のボードビリアン。舞台のシーンはクレーン後退移動で二階席まで上がるカメラワークが流麗だ。序盤は、色恋沙汰というよりは、仕事のパートナーとして、ケリーがガーランドを引き抜こうとするパート、ということができるのだが、ケリーがしつこく付きまとうが、ツンツンのガーランド、というのも見せ場だろう。しかし、初めて二人で試しに踊るカフェのシーン。こゝで、タイトルソングが使われるのだが、もう涙が出るぐらい感動してしまった。なんという
軽やかなダンス。

 中盤以降、パートナーになったケリーとガーランドが、ケリーの夢の舞台であるNYのパレス劇場出演を目標に頑張る姿が描かれるのだが、夢を叶えるために、ケリーが有名女優-イヴ・ミナードに接近したり、といった恋の行方に関わるドラマなんかが盛り込まれる。さらに、欧州大戦の勃発とケリーの徴兵という問題が、夢の実現の大きな障壁となる、という展開だ。これに対して、本作では、徴兵忌避の行動まで描かれるので、製作年を考えて驚いてしまったのだが(本邦では考えられない!)、やはり、最終的には、徴兵忌避は否定される描かれ方だ。

 ミュージカル場面では、シカゴのショーで、ガーランドが一人「アフター・ユーヴ・ゴーン」を唄うシーンにも感激した。タイトル曲同様、ガーランドが後年まで持ち歌にした曲だ。歌唱の途中でケリーを思い出し、一瞬途切れる、という演出が上手い。あと、ドラマパートの脇役で書いておきたいのが、ガーランドの弟ダニー役で、中盤には出征するリチャード・クワイン。彼は後に『パリで一緒に』などを撮る監督になる。それと、後半のマネージャー役はキーナン・ウィンだ。本作では彼のコメディ・パートは無し。

 そして、終盤はあっけに取られるような怒涛の展開となる。ニュースリールも使った戦場のシーンが挿入されるのだ。しかし、とってつけたような戦意高揚臭い展開になってしまうのは、ポリティカルな好悪を度外視しても、映画としてバランスが悪い構成に思う。この当時の米国映画としてたまに見るが、本作も、エンドマークの後、戦時国債の広告が出る。
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