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バービーの10000lyfhのレビュー・感想・評価

バービー(2023年製作の映画)
4.5
女性上位のバービーワールドで幸せに暮らしていたバービーが、自身の所有者の扱いにより発生した心身トラブル解決のために出向いた現実世界で、家父長制を体験、一方でその概念が持ちこまれたバービーワールドではジェンダー戦争が勃発。「女性は完璧を求められる」「大統領にも母にもならなくてもいい」など、ジェンダー関連の、中には相反する様々な思いがこめられている。バービー自体が、登場人物のセリフにあるように「フェミニズムを 50年遅らせた」伝統的な女性像から出発した後、女性の社会進出や経済的自立を促進する役割も担うに至ったという、相反する属性を併せ持っていることと、呼応している。

監督ら製作陣の女性たちのバービー愛は間違いなく強い。女性として魅力的であることと、プロフェッショナルキャリアを築くこととの、両道の象徴としてバービーをとらえていると思う。本作のアイディアの出発点だろう。

バービーワールドと現実世界の関係性は明確なルールづけなく曖昧で論理性を欠く。また、ラスト前のバービーとその考案者との、娘と母のようなセンティメンタルな会話や、バービーあってのケンという脇役キャラが自己肯定感を得ることなど、コンテンツ詰めこみ過ぎによる不統一感もある。これらを意図的に作ったり残したりしており、あざといと言えばあざとい演出手法だが、一般の映画ファンが、これを普通に受容できるまで成熟したことも実感する。

マテル社目線では、先述の「フェミニズムを 50年遅らせた」などの批判や、経営幹部が全員男性といった自虐ジョークをあえて取りこみ、大人の立ち位置を示したことで、効果的な宣伝映画となっている。製作者たちの提案にのり、出資にも至ったのではないかと想像するが、そうであれば、大企業とメッセージ映画との新たな関係性が提示された。

サントラでは、バービーをブロンドジョーク的に扱った 90年代ユーロポップクラシックの、ニッキーミナージュとアイススパイスのラップでのリミックスが耳に残るが、その発想のセンスと実現のプロデュース力がすごい
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