えびちゃん

アンナの出会いのえびちゃんのレビュー・感想・評価

アンナの出会い(1978年製作の映画)
4.5
アケルマン初観賞。ファーストカットからかなり好きだと思った。ピリッと背筋の伸びるような、落ち着かない、心許ない雰囲気は最初から最後まで続き、一瞬も弛緩することがなかった。ストーリーになんの起伏もないのに、センターをがっちり捉えた画づくりや、流れるような横移動の美しさ(アンナがホテルの廊下を歩くだけのシーンなのに感動!そこには昼過ぎ慌ただしく部屋を清掃しベッドメイクする人たちを捉えているのだ。)に心とらわれっぱなしで目が離せなかった。
映画のプロモーションのために欧州を巡っていく中で出会う人々の独白を浴びせられるロードムービー。
誰もが好き勝手に、自分がどれだけ恵まれていないか、どれだけ孤独かを一方的にアンナに話し続ける。なんでみんな心のうちを他人にさらけ出せるんだろうな。語り、というのはほとんど暴力だと思った。対話でなく、話したいように話すだけ。聞き手は捌け口なんかじゃないのに。自己完結してくれよ、頼むから。(自戒込み)
たった一度だけ母だけがアンナの話を聞くが…それでも虚無感、寂寥感が漂いつづける。男と寝ても女と寝ても母に後ろめたいことを打ち明けても埋まらない孤独にこちらが叫んでしまいそうだった。

消えてしまいそうな儚さのあるオーロール・クレマンの佇まい。パリ、テキサスの継母役、エル・スールの父の元恋人の女優役、といずれも深く印象に残っている。稀有な俳優さんだと思った。

リヴェットでボコボコに殴られて映画を観る自信を失っていたから『理解できる』作品に出会えてしかもそれががっちり自分の好みを捉えていてすごく沁みた。ジャンヌ・ディエルマンが最後になるように組んで観る予定だが、初っ端からかなり素晴らしくて他の作品への期待値が恐ろしく高い。
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