てっぺい

シン・エヴァンゲリオン劇場版のてっぺいのレビュー・感想・評価

4.0
【卒業する映画】
人物像掘り下げまくり。過去映像も要所で使い、当然ながらの作品愛に溢れてる。ストーリーそのものも抜かりなく、全ての要素を使った伏線回収で、この途方もない25年のシリーズを見事に完結、卒業させた作品。もう”笑えばいいと思う”。
◆トリビア
〇本シリーズの主人公の自意識や人間関係と、世界の命運という両極端なスケールから、セカイ系という呼称がうまれた。(https://ja.wikipedia.org/wiki/新世紀エヴァンゲリオン)
〇庵野監督はキャリアの初期に「風の谷のナウシカ」の巨神兵の作画を担当しており、その特徴を引用してエヴァンゲリオンを制作したとも言われている。実際に、新劇場版と同時上映の短編として『巨神兵東京に現わる 劇場版』を制作している。(https://ja.wikipedia.org/wiki/新世紀エヴァンゲリオン)
〇新劇場版シリーズの製作発表際の所信表明文に、庵野監督は「エヴァはもう古い」と語っている。(https://web.archive.org/web/20070219023711/http://eva.yahoo.co.jp/gekijou/big_message.html)
◆概要
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズ4部作の完結編。
企画・原作・脚本・総監督:『シン・ゴジラ』庵野秀明
総作画監督:錦織敦史
監督:鶴巻和哉、中山勝一、前田真宏
テーマソング:宇多田ヒカル「One Last Kiss」

◆以下ネタバレレビュー

◆人物像
両親のいる家庭を羨み、両親と戯れる昔のシンジとも交錯していたアスカの生い立ち。空いた棺と閉じた棺の間で佇む渚カオルの生い立ち。他人と接するのが苦痛だったと、シンジとシンクロするゲンドウの生い立ち。特にゲンドウに関しては、シリーズを通してシンジのアイコンとして描かれていたラジカセが、ラストでゲンドウの物だと分かる。心を閉ざすためのツールだったとゲンドウが語った通り、ラジカセがまさに、ゲンドウとシンジが親子としてシンクロする重要なファクターだった事が明かされた。この、人物像が深掘りされて、各キャラの思いに触れ、過去作の各シーンに思いを馳せなくてはいられなくなるシリーズラスト、これが全体構成としてとても美しいと思う。
◆作品愛
冒頭から過去3作の振り返り(映画館でお隣の女性はここからボロ泣き)。シンジvs.ゲンドウのエヴァ同士がミサトの家に飛び、レイの部屋に飛ぶ。当然ながらの作品愛が、過去の映像を使いながら溢れるほど表現されていて、シリーズファンにはもちろん、僕のようなにわかでもウキウキだった。さらにはエンドロール。アニメーターが多数名を連ねるのは数あれど、あれほど多岐に渡る会社名が出てくるものは無いと思う。このシリーズがどれだけ巨大なもので、作り手に愛され、多くの人に日本の文化だと意識されているのかを垣間見るような、”これが日本のアニメだ”と言わんばかりのエンドロールだった。
◆映像美
ゲンドウvs.シンジの街中バトルでは、CG建物がなぎ倒されていく様が、アニメでは表現できないリアルさ。物質化された大量の魂が津波のように押し寄せる映像もしびれた。ラストでマリとシンジが再開する海辺が突如原画化されたのは、製作スタッフのたゆまぬ努力やこだわりへの、監督の感謝の現れだったようにも思えた(映画としては禁じ手とは思うけど)。宇部新川駅周りが実写だったのは、この物語が、閉ざすばかりだったシンジの心の成長物語でもあり、そこに現代の人にもリアルなものとして共感してほしい、そんなメッセージだとも思った。
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