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猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.8
 滝の裏側に作られた人口要塞、そり立つような急勾配の崖の斜面、狙撃手プリーチャー(ガブリエル・チャバリア)を先頭に今日も人間たちは「シーザー討伐作戦」に取り掛かる。前作『猿の惑星:新世紀』におけるサンフランシスコのゴールデンゲート・ブリッジでの攻防の後、人類が助けを求めたSOS電波は800マイル北で受信された。大佐(ウディ・ハレルソン)は猿ウィルスにかからなかった米軍の残党を従え、独自の軍隊を形成し「シーザー討伐作戦」にやって来ていた。今作は前作から2年後の世界を舞台にしている。盟友であり、戦友でもあったコバ(トビー・ケベル)をこの世から葬り去ったシーザー(アンディ・サーキス)は、自らの作った規律「猿は猿を殺さない」という掟に背いたことに苦しむ。シーザー率いる軍隊は相変わらず磐石だが、リーダーであるシーザーのアイデンティティは激しく揺らいでいる。そんなある夜、大佐率いる軍隊「アルファ・オメガ」(新約聖書で「始まり」と「終わり」の意)の奇襲を受けた一行は妻コーネリア(ジュディ・グリア)と前作で亡くなったアッシュの兄弟であるブルーアイズ (ニック・サーストン)を殺されてしまう。怒りに打ち震えるシーザーは大佐を追い詰めるものの、滝壺に落下する。

 『PLANET OF THE APES/猿の惑星』以来10年ぶりとなる『猿の惑星』リブート・トリロジー完結編。なぜ人類の文明は滅び、猿が支配者となったのかを明らかにする新シリーズは、68年のオリジナル『猿の惑星』を踏襲した人間 vs 猿の下克上の物語に他ならない。前作『猿の惑星:新世紀』で人間と猿の共存する社会を目指していたシーザーは軍隊の存続ではなく、家族の復讐という私怨の炎に燃える。ここには前作までの冷静だったリーダーの姿はなく、亡霊のように現れるコバの悪夢にうなされる。なぜかけがえのない存在の命が理不尽に奪われねばならなかったのか?自問自答する彼の眼前に1人の少女(アミア・ミラー)が現れる。贖罪の念に苦しむシーザーと純粋無垢な天使のような少女との関係性は、真っ先にジェームズ・マンゴールドの『LOGAN』が思い出される。だが前作のようにゴリゴリの戦争映画になるべく作られた物語は、クリント・イーストウッドの『アウトロー』の神話のような西部劇の風格を讃える。前作で人間たちの最新兵器を手にした猿たちがここでは打って変わり、西部劇のような槍や弓で迎え撃つ。コバに続きウィンターまでも殺めてしまったシーザーの焦燥感、戦争と復讐のレイヤーの差を説く大佐とシーザーとは合わせ鏡のような苦悩を抱え込む。人間が言葉を奪われ、逆に猿たちはジェスチャーから高度な言葉を操るという皮肉めいた文明社会への風刺は秀逸だが、大佐以外の人間の葛藤が誰1人見えないのは残念で仕方ない。終始重苦しい物語に対し、コメディ・リリーフとして登場するバッド・エイプ(スティーヴ・ザーン)の存在感が光る。
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