かなり好き。
表現力がとてつもない。
その豊かでのびのびとしたアニメーションに心が躍る。
音楽や色が、見ている私の感性を呼び起こそうとする。子どもの頃の世界の見え方を。
しかし、その力をもって、確実に突き付けてくるものがある。
お父さんを探しに行くその過程で、子どもが目の当たりにする世界。
自然豊かで余白もある広々とした空間も、何もかもがぎゅうぎゅうとして隙間なく詰められた空間も、ただ広がる空や海も、見る者の立場によってその意味がまったく変わってしまう。
ふわふわとして気持ちの良いもこもこは、しかし、数えきれない労働者の手によって紡がれている。彼らは簡単に使い捨てにされる存在だ。
それでも日々の糧を得る必要がある。
捨てられないように振る舞い何とか仕事にしがみつく。
そこに押し寄せる機械群。
仕事の効率は格段に上がるし、目がお金の形になる者もいただろう。そういう者たちが推し進めたプロジェクトかもしれない。
その目に労働者たちは映っていただろうか。
戦争って、人をあえて見ない行いだったりする。
主人公の大切な「音」の記憶。
美しいものを生み出す音は、確かに禍々しく黒いものを生み出す力も同時に有している。
その描写は、黒の侵蝕力の大きさを感じさせる。
その中で、人はどれだけ美しいものを生み出す音を紡ぎ続けられるだろう。
その気力をどのように保てるのか。
簡単に搾取され、簡単に壊され、簡単に黒に染まる。
その中で、どれだけ愛する景色を諦めずにいられるのか。
鋭い鉤爪は、柔らかなアニメーションとなって心に迫ってくる。
頭より、心に何かを残す、そんな作品。