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気分を出してもう一度のukigumo09のレビュー・感想・評価

気分を出してもう一度(1959年製作の映画)
3.5
1959年のミシェル・ボワロン監督作品。そして主演はブリジット・バルドー。この2人のコンビ作としては『この神聖なお転婆娘(1955)』、『殿方ご免遊ばせ(1957)』があり、本作が3作品目。他の監督の作品では、貧しく育ちの悪い女性や悪女を演じることのあるバルドーだが、ボワロン監督が撮る彼女は全てブルジョア育ちの陽気なお嬢さんの役であり、内容も軽くて甘い。そういった役柄や内容は彼女の魅力を引き出すのに最も適しており、ボワロン監督とのコンビ作はすべてがバルドーの代表作と言っていいだろう。とりわけ本作『気分を出してもう一度』での彼女の弾けるような笑顔や、陽気なセクシーさ、適度に込み入ったミステリ的ストーリー等何度も観返したくなる面白さだ。

ヴィルジニー(ブリジット・バルドー)は歯医者のエルヴェ(アンリ・ヴィダル)と出合い結婚する。ヴィルジニーは白衣を身に着け、夫の助手をしているのだけれど、患者そっちのけで夫とキスをするほどの熱々ぶりだ。熱々の2人は時に些細なことで激しくケンカもする。そんな時夫は夜の街に出かけていき、そこで妖艶な魅力を放つダンス教室の教師アニータ(ドーン・アダムス)と出合う。彼女の誘惑に負けそうになり、キスまでしてしまうのだけれど、実はそれは罠で、後日その時の写真をネタに強請られてしまう。この写真を隠し撮りしていた男を演じているのはセルジュ・ゲンズブールで、本作は彼の俳優デビュー作でもある。

妻に写真を見られるわけにはいかないエルヴェはダンス教室に向かうが、アニータは何者かに殺されていた。出入りしたものはエルヴェ以外おらず、いわば密室状態であり、動機は十分。彼に容疑の目が向きそうな状況だ。そこで登場するのが妻のヴィルジニー。近頃の夫の様子に異変を感じ尾行していたのだ。夫の無実を信じる彼女は真犯人を見つけるために素人探偵として奮闘する。

彼女はダンス教室の内情を探るために、大胆にも新人ダンス教師となって潜入捜査を始める。素敵な衣装を着た彼女がそこで見せるマンボのダンスは、踊ること、愛すること、生きることの歓びを爆発させるように情熱が溢れだしていて素敵だ。

直感とお色気を駆使して真相を究明しようとするバルドー探偵の物語は、他のミステリ映画と比べてかなり軽くてゆるい。この軽さやゆるさはどちらかといえば戦前のハリウッドの、ロマンティックコメディを観ているような心地よさだ。そして美人局や同性愛者、ゲイバーの描写という、当時のハリウッドでは観ることができないようなシーンも陽気に描かれていて興味深い。

バルドー探偵は色々な人に聞き込みをし、真相に迫っていく。多くのミステリ映画のように彼女も自信満々で夫に謎解きを披露するのだけれど、核になる部分は実は警部の入れ知恵であった、というオチも実に彼女らしくて最高にキュートだ。
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