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ソムニア 悪夢の少年のEikeのレビュー・感想・評価

ソムニア 悪夢の少年(2016年製作の映画)
3.2
ホラーではなくダークファンタジーといった雰囲気の作品。

自宅で幼い我が子を事故で失うという不幸を経験したジェシーとマーク夫妻。
いまだ傷が癒えぬままの二人は現状を変えるべく施設から里子を迎えることに。
引き取ったのは8歳の少年コーディ。
利発で人当たりも悪くない彼ですが何故かこれまで何件もの里親家庭を渡り歩いてきた模様。
ジェシーとマークはこの男の子に惹かれるものを覚え、かすかな光明を見出すのですが。
そんなコーディ―はある秘密を抱えていた…。

作品が完成していたにもかかわらず独立系の配給会社の倒産などもあって結局きちんと劇場では公開されなかった不遇な作品。
それを救うことになったのがストリーミングサービスで、2015年辺りからNetflixを筆頭にガンガンとオリジナルコンテンツの拡充が始まっていて、こうした作品を掬い上げて紹介するチャンネルとなりました。

そんな本作ですがコアなホラー映画のファンにはあまりお勧めしにくい作風に仕上がっております。
というのも作品のプロットから察しが付くように本作は「家族愛」が中心テーマとなっており、8歳の少年を主人公に据えている関係もあって
過激な描写や展開は最初から期待できないと内容と言えるでしょう。
もちろん主人公の少年の「能力」にまつわる描写には多分にホラー要素も取り入れられてはおりますが。

作り手であるM・フラナガン氏自身が本作はある種の「寓話」でありダークな要素を含むファンタジーであると公言しておられます。
その点で「ホラー映画」として売り込みたい配給側と揉めたという話も聞こえてまいります。
その上で作品の出来はどうなのか。

先述の通りホラー映画として過剰に期待を寄せると物足りなさを覚えることになるのは事実でしょう。
しかし甘ったるい作品になっても可笑しくなかったと思うのですがそこを微妙なところで抑えているのは好判断だと思いました。
亡き我が子の幻影を求めてコーディ―の能力を利用しようとするヒロイン、ジェシーの身勝手な動機を描くことで人物像にも深味が出ておりますし、コーディ―の出自と彼の抱える悪夢の正体を巡るミステリー要素を盛り込むなど展開にも工夫が見られます。
低予算の作品ですがグズグズな物にはなっておらず、ちゃんと映画らしい作品に仕上げられております。
これでせめてヒロイン役のケイト・ボスワースの演技にもう少し吸引力があれば…。

脚本・監督のフラナガン氏はNetflixで着々と作品を発表し着実にキャリアを積んでおられます。
あのシャイニングの正統続編「ドクタースリープ」も公開済みですが、オリジナル作品でじっくりと作品を作るという意味ではストリーミングサービスでの制作が性に合っているのかもしれません。
「ホーンティング・オブ・ヒルハウス」「真夜中のミサ」とシリーズ作を発表し好評を博しておられます。

御大スティーブン・キング氏のお眼鏡にかなった確かな才能には今後も注目しておきたいと思います。
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