昼行灯

Wの悲劇の昼行灯のレビュー・感想・評価

Wの悲劇(1984年製作の映画)
3.6
冒頭からしてアイドルが処女喪失するシーンってなかなかすごいのでは…その後もガニ股で歩いたり安全日をカレンダーにマークしてたりしてやばい。処女キャラとしていじられてるから、そりゃそうなるわな…って感じ。

冒頭の暗いラブホや早朝の公園、夜の居酒屋、アパートなど暗い場面が多くて、かつ長回しでゆるやかにパンしがちで横長を意識させるから、舞台を降りても女優なんだなあというか、主人公は女優という運命から逃れられないんだなと思った。クライマックスの刺されるシーンも、それまで報道陣や客が画面を埋めつくしてたのに、急にヒロイン男ライバルの3人が階段にいるショットを俯瞰で捉えるようになって、極度に抽象化された画面が演劇を思わせた。あと、報道陣によってたくさんのフラッシュを浴びせられるヒロインのバストショットはサンセット大通りをちょっと思い出した。

原作の使い方も、原作を売りにしてる角川映画の割には結構攻めてるのでは。劇中劇にのめり込み、女優として成長していくに連れて、自分の人生が劇中劇のストーリーと重なってきてしまうのはちょっと怖い。まるで劇と現実の違いが薄れてきてしまっているような…それは、メタ的に見れば薬師丸ひろ子自身が映画のヒロインと同一化させられてしまっているようでもあって、ちょっと危険だなと思った。つまり、この映画の演技をもって薬師丸ひろ子は一人前の女優として開花したと。この映画を見るということはその過程を窃視することにほかならなく、さらに彼女に対する評価を下すのは観客であるということを考えると、この映画の制作意図や表象にはピュグマリオズムが透けて見える。まあアイドル映画はみんなそうだと言えばそれまでだけど、、

女が芸事で大成するには、女を捨てなければいけない一方で、女を売らなければならないというのがやだなーていうのは思った。これもマルヴィが定式化した去勢回避の2ルートの別パターンだよなあ…女優としての幸せか、女としての幸せか、二つに一つしか選べないのは、演劇界が男性中心主義の構造だからだよな👨そしてそれは、アイドルのエロを思わせるシーンをみたい、だが恋愛は成就して欲しくないという典型的男性ファン心理と相性がいい。
こんな構図が透けて見えるから、主人公がスキャンダルでのし上がってるのを描いたのかもしれないけど、全然悪女には思えなかった。そもそも大女優含め2人はパトロンの被害者でもあるしなあ。元俳優のノリもキモくて、この映画で男性にひかれることは無かった
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