垂直落下式サミング

ある天文学者の恋文の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ある天文学者の恋文(2016年製作の映画)
2.9
オルガ・キュリレンコは顔が好き。ウクライナ美人は、綺麗で可愛く儚くて危うい。傷心女子が、今は亡き恋人に導かれてヨーロッパ旅行に繰り出していくのは物語としてダイナミックなんだけど、気分が沈んでいるからか、あんまりいろいろな服装に着替えてくれない。ずっと暗い色のコートとかジャケットとかを着てて、楽しくなさそうで心配になってしまう。
幸の薄そうなオルガ・キュリレンコには無条件でウットリでしたが、相手役のジェレミー・アイアンズは別に好きな役者じゃなかったようで(辛辣)この老人には死んでからも想い続けるような魅力を感じず…。
ストーリーについても、オル子が最初から最後まで受け身で、ずっと故人のターンが続くのが嫌だ。序盤から二人の歯の浮くような会話に恥ずかしくなるし、男がロマンチストで紳士的ってよりは、親子ほど年の離れた小娘の惚れた弱みに漬け込んでる感が実に老獪でキショかった。
なんか、ロリコンジジイの世迷い事のくせに、一丁前に相手に誠実さを求めたりとか、関係の永遠性を望んじゃってんのがもうね、ヤバいなっていうか、浅いなっていうか、醜いなっていうか…。
いま地球に届いている星の光は何万年も前のもので、実はその星はもう存在すらしていないかもしれないってのが物語のテーマである。それは、生命の輝きを失ってからも君を見守るという意味で、天体観測と二人の関係とがリンクしていて、そこはいい感じ。でも、これによって浮き上がるのが男のエゴでは救われない。肉体を失ってなおも現世に残り続ける何者かの意思、それを「亡霊」と呼ぶと僕はガッコーで教わりましたけど?
両想いは呪いだとするのは、まったくひどい話です。
監督トルナトーレは『ニューシネマ・パラダイス』の一発屋なのか。はたして今後どうなっていくのか、動向を追ってみたい観測対象ではある。