半兵衛

愛に濡れたわたしの半兵衛のレビュー・感想・評価

愛に濡れたわたし(1973年製作の映画)
3.3
主人公を含めて登場人物たちはみなドラマのなかで人間として存在しているけれど、誰一人としてアメリカ映画のように理論的に動いている人はおらず謎めいた言動や行動を繰り返していくので観客はそんな不条理なドラマにいつしか主人公のように翻弄されていくことに。でもそれが変な刺激となっていつしかいくのが不思議、でも情報のないまま振り回されるので疲れる。

吉行淳之介に出てきそうな抽象めいた人間像を実体として演じる役者の演技も見所、そしてそんな世界でも女王として君臨する中川梨絵は凄いというかなんというか。

ポルノ映画なのでエロシーンは登場するがどれも夢なのか現実なのかはっきりしないまま、しかも唐突に終わるのですっきりしないもやもやした気分になる。それなのに出血シーンがやけにリアルなのが引っ掛かるが、実はラストの伏線になっていたりする。

妻を失った主人公が訪れるバーに別の人物が訪れる円環構造のようなラストが決まっている、そして監督した加藤彰が脚本から変更したと語る悪女だと思われていた人物が自分なりのけりをつけるように行動に出るエンディングは実体のないお話に突然人間の生々しいドグマが溢れだしたようで衝撃的。
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