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夜の人々のtntnのレビュー・感想・評価

夜の人々(1948年製作の映画)
4.3
冒頭と結末で、ファーリー・グレンジャーもキャシー・オドネルも佇まいや表情がまるっきり変わる。95分でここまでの変化を描けるのが単純に凄いと思った。
エドワード・アンダーソンの原作タイトルは「Thieves Like Us」。
序盤の台詞で既に「庶民から金をむしり取る銀行なんて俺たちと同じ強盗だ」とあるが、この「like us」や「same as us」という言葉は劇中で何度か反復される。
それはボウイやキーチにとって迫り来る疎外と孤独を振り解く手段である。終盤で追い詰められたボウイは、「あんたも俺たちと同じなんだよ!」と最早脅迫めいた口調で言い放つ。
二度登場する結婚式場の場面が象徴的。一度目で、カメラはキスをする二人をアップにするのではなく、その場に居合わせた周囲の人々の中に二人を置く。二人にとっては、まさしく他の人々と同じような睦まじいカップルであることが重要。それに対して二度目では、周囲との決定的な隔たりが描写される。
そう考えるとボウイとキーチの装いの変化は、住む世界が違う二人が徐々に似たもの同士へと変化する様と同期している。別々に行動する機会が訪れそうになると、ボウイとキーチは「二人=カップル」として、もしくは「They/them」として扱われ行動を共にせざるを得なくなる。それは愛の成就であると同時に、世間から「like us」な存在としての根拠を奪われる過程でもある。
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