2014年(2015)/フランス
原題:La Famille Bélier(ベリエ家族)
※掻い摘んでいますがネタバレ度は中くらいです
食卓での牛の名前に対するユーモアなやり取りや、いってきますのキスを何度も躱す、和やか日常に頬が緩みました。
父親が村長に手話で悪態をつくシーンは、相手が理解できないことをよいことに過激で笑えます。
なだめ役であったはずの主人公が、父親を馬鹿にされた瞬間容赦なく言い返すなど、親子愛をサラッと描いており小気味よいです。
強烈なビンタを皮切りに、主人公が怒りを歌に乗せて感情を爆発させるシーンは、まるで“天使にラブ・ソングを…”で殻を破る“メアリー・ロバート”のようで鳥肌が立ちました。
また、フェンスに手を当ててタララララッ、と余白のある演出で、主人公が大人になる一歩手前なのだということをそれとなく感じさせてくれます。
主人公に伴って成長していく音楽教師は、主人公に困難が降り掛かったときに大きく背中を押してくれました。
さながら、自身の背中を叩いているようでもあり、最後には主人公のため一生懸命してくれている姿に愛おしさすら感じます。
ラストの歌唱シーンは、歌がベリエ一家の情景に完全にリンクしていき、綺麗な歌声や手話での表現も相まって、言葉では表せきれない感動に包まれます。
最後まで歌い切った後の母親のコミカルな歓声が最高の緩急で、感動のみでは終わらせないのが憎いです。
旅立ちの時、耳が聞こえないという家族たちの距離感による、動物のような愛に溢れた激しいハグに感極まりながら、清々しく自身の脚で夢へ駆けていく主人公に、最後は充足感で満ち溢れました。
ろう者やヤングケアラーを扱いつつも、一貫してコミカルに描いており、ノイズを感じることなく素直な気持ちで見ることができました。
ラストのシーンは何度見ても感動します。良い選曲でした。メルシー。